こういった逆転劇が出来るようになった、という点では苦しみながらも徐々に本来の姿に戻りつつあるのかもしれない。2点先行されながら逆転でハル・シティを下したユナイテッドはジワジワと勝ち点を積み重ねている。

フレッチャーがスタメン復帰し、ヤヌザイの代わりにヤングが入った。序盤からアウェーの雰囲気に飲まれたのか、押され気味に試合が進む。CKを与えたところでエブラがファーであっさり競り負け、落とされたところを詰められて早々失点。その後バタついたところを更に突かれ、クリアしきれなかったところを押し込まれ追加点。15分経たないうちに2点先行される苦しい展開となった。

【ハルのビルドアップ封じと不可解なユナイテッド】

試合に勝ったのはユナイテッドだったが、ハルは上手くユナイテッドのビルドアップを封じていた。特に前半、アンカーに入ったフレッチャーが最終ラインまで降りて展開しようとしたところに執拗にプレッシャーをかけてリズムを思うように作らせなかった。こうしてなかなかリズムに乗れないユナイテッドは上手く連動出来ず、思うようにボールを動かせていなかった。楔のボールを入れてもなんとなく入れたボールなので、周りが連動せずに後ろへ戻すボールが増え、ポゼッションの割合が高いことはあまり意味をなさなかった。もちろん前をすんなり向かせないようにハルの選手たちがタイトに守っていたことも忘れてはならない。スムーズにボールが動かせずにパスを探すユナイテッドの選手たちを複数で囲み、サクッとボールハントしていた。もちろんユナイテッドがミドルサードから前をすんなり向けた時には大抵チャンスになっていたことも付け加えておこう。

ハルは上手いこと封じていたが、よくわからなかったのはユナイテッドの方であった。フレッチャーはあの中ではうまいことプレーしていたが、チーム全体でビルドアップに苦戦していた。まずここ最近好調だったバレンシアは右足しか使えないことを改めて狙われ、サイドでマッチアップしても縦方向を予め切られた形を取られた。ラファエルの負傷による離脱はチームにとってかなりキツイが、この試合に限っては代わってヤヌザイが入ったことで幾分ビルドアップの足しになった。

しかしこの日不可解だったのはルーニーとウェルベックの位置関係だった。これまで最前線に置いて好調だったウェルベックと、ビルドアップに絡んでチームを支えたルーニーの位置を入れ替えたのだ。連戦の疲労を考慮したのか、目先を変える目的だったのかは分からないが、ビルドアップで苦戦し、サイドにもうまいこと展開できずにいたユナイテッドは効果的な攻めは出来ずにいた。フレッチャーを下げてチチャリートを投入し、ルーニーを中盤に置いたことでビルドアップは改善し、やっと効果的にサイドに展開出来るようになったことを考えてもルーニーはこれまで同様にはじめからビルドアップに絡ませるべきでなかったのか、と考えてしまった。

もちろんそんなことは言ってもユナイテッドは追いつき勝ち越してしまったのだから恐れ入る。まずはセットプレーから追いつき反撃ムードを作ると、囲まれていると思ったルーニーがワントラップから技ありの浮き球ミドルを放ち、見事にネットを揺らす。時計はまだ30分を経過していなかったが、既に4つのゴールがスタジアムを盛り上げていた。

【失点に繋がるミスとそうでないミス】

改めてエブラが絡んだ失点シーンについて触れるが、エブラは小柄ながら身体能力に優れたサイドバックである。しかししばしば空中戦ではどうしようもない高さに狙われることがあることもユナイテッドを見続けている皆さんならお分かり頂けるだろう。まず、ファーに蹴られたCK 、エブラは一番近くにいてマークしていたであろうアレックス・ブルースに競り合うこと無く、スタンディングでヘディングしようとステイしている。確かにアレックス・ブルースは背の高い選手ではないが、それをやすやす跳ばせてタイミングが良ければ、どうしようもない。結果競り勝たれ落とされたところをチェスターに詰められてあっさり失点してしまった。この失点がまずかったのは、試合開始直後であり、この後もバタつきを助長して2失点目を手招きしてしまったことである。結果的に勝った試合だが、命取りになるミスになりかねるミスでもあった。

失点に繋がったミスをもう一つ上げるとユナイテッドの3点目に繋がったフィゲロアのミスだ。ゴール自体はチェスターのオウンゴールだったがこれを招いたのはフィゲロアの判断ミスからであった。ウェルベックからヤングへの何でもないサイドへの展開のパスを、インターセプトできると踏んだのか、滑りこんで狙ったが、見事に目論見はずれてヤングはフリーでクロスを上げることに成功した。ヤングがフリーになった時点で最終ラインはヤングに目をやらざるを得ず、後ろからフリーで飛び込んできたルーニーが一瞬視野に入った時にはクリア仕切る余裕は無かったのだろう。見事にゴールネットを揺らしてくれた。フィゲロアが飛び込むこと無くヤングに正対していれば、おそらくなかったゴールだと思われる。

失点に繋がらなかった大きなミスといえばデ・ヘアだろう。終盤にビッグセーブでチームを救ったが、その前にはロングボールに対して飛び出すタイミングを見誤り、飛び出したところで必死にボールを回収しにいく際にPKになるかとヒヤヒヤしたものだ。

もちろんゴールという結果のタラレバであり、フットボールにはかなりのミスが付き物だが、一つのミスが致命傷になりかねないということを改めて示した試合であったと私は感じている。点差が付きにくい競技故、ワンチャンスやワンミスで展開がガラリと変わってしまうこともフットボールの魅力ではある。もちろんこのように書けているのも勝ち点3を無事に獲得したからであるが、終盤脚が止まったユナイテッドを相当ヒヤヒヤしながら観ていた。

キャリックは復帰したが、ラファエルがまたも離脱を強いられそうな感じであり、またバレンシアは終盤余計なイエローをもらって退場になってしまった。ここ数試合好調だった右サイドのコンビがそろっていないことは、ターンオーバーと考えられなくもないが、いささか不安が残る。

この過密日程では怪我も避けて通れないのだが、この時期に最小のけが人と最大の勝ち点を手に入れたクラブが優勝へと大きく近づくことは間違いない。プレミアのどのクラブも同じレギュレーションで試合をする以上それは変わらない。

試合を観ていた方はお気づきだろうが、アレックス・ブルースは紛れもなく同じ顔とファミリーネームを持つハル・シティのマネージャー、スティーブ・ブルースの息子である。もちろんスティーブはユナイテッドの選手であったので顔を見れば分かる方も少なく無いだろうが、それにしても父そっくりである。また、ハルの先制点とユナイテッドの決勝点を叩き込んだジェイムズ・チェスターは数年前までユナイテッドに所属していた選手である、といってもローンで移籍繰り返しており、トップチームでプレーしたのはリーグカップの1試合のみなのでほとんどの方の記憶に無くても仕方がない。

正直なところここまで苦しむとは思っていなかった。それほどハルは上手くプレーしていたように見える。特にハドルストンはボール持てば的確に捌いて、しばしば嫌な展開のされ方をしていた印象が強い。最も一番悪い印象はあの主審なのだが。

さあ連戦は続く。プレミアの熱気は冷めること無く年を越す。この原稿を書いている数時間後にはまた試合だ。眠気覚ましにはユナイテッドのゴールが一番効く。みなさんもそうでしょう?

【試合ハイライト】

  (権利元の都合により埋め込みコードの掲載を取りやめました)

 


筆者名:db7

プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
ツイッタ ー: @db7crsh01

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