ビッグマッチと言われる試合でも、探りあい過ぎてダレることは珍しいことではない。しかしこの試合はダレるというよりも、双方のクオリティがあまり高くない故のピリッとしない試合であった。どちらのサポーターであっても、第三者であっても楽しめたという人はあまりいないのではないかと思われる。

ユナイテッドの不調は今に始まったことではないが、アーセナルは序盤戦のようにエジルが輝けてないことに起因するのだろうか。疲れなのかアーセナルの内部的な問題なのかは分からないが、前回の対戦時もエジルはいまいち輝けていなかったので個人的な印象としてはあまり変わらない。

アタッキングサードでポジティブな成果を上げることのできなかった両チームだが、それ以外の部分ではやはり差がどうしても現れてしまう。ユナイテッドのビルドアップのクオリティの低さを否が応でも見せつけられることとなってしまった。

【クレヴァリーを起用する理由が見えない】

いいところが無いわけではないが、今のユナイテッドの状況を好転させるようなプレーが全く見せられないトム・クレヴァリーをいつまで使い続けるのか。ビルドアップにセンスの欠片が全く見られないこの選手をいつまでも起用し続ける限り、前後がリンクすることはないのでは無いかと思えてしまう。

もちろんクレヴァリーのみをスケープゴートにするつもりは無いが、今シーズンのプレーを観ていると、起用された試合で良かったと満足できる活躍を見せた試合は片手の指で数えられる程度だ。起用するモイーズの基準がどこにあるのか聞いてみたい。

【マタ・シフトを模索する前にやるべきこと】

大きい買い物となったマタを活かすためにはどうすべきなのか。毎試合試行錯誤しながらテストしているが、いまのところ答えは出ていない。すぐに出るとも思ってはいなかったが、不完全燃焼感は買い物金額の大きさから来るものが非常に大きい。

ユナイテッドにとって活かすべきはマタのみならずウェイン・ルーニーが最優先だろう。マタを活かすあまりルーニーが輝けなくては意味が無い。マタを活かしてルーニーが輝ける方法を模索するのが一番いい道だと考えられるが、現状そう簡単に話は進まない。

モイーズが行うべきはプレービジョンの統一であって、その場しのぎのメンツを活かすことを模索することではない。開幕当初は高い位置からプレスを掛け、相手を押し込み続けることが共通の理解であったが、結果がついてこないあたりから徐々にその辺りがぼやけていった。

相手を押しこむことに成功してもその先のクオリティに難がある故に成功しなかったのだが、これはサー・アレックスが晩年にバルセロナにコテンパンにやられて移行、パッシング・フットボールに憧れてチャレンジした「悪影響」が災いしている。

現実問題、ユナイテッドの今のメンツを見れば無理があるスタイルにシフトするのは止めるべきであり、完全なカウンタースタイルとまではいかないが、ある程度前線にスペースを残しておくためにプレーエリアを下げる必要がある。 押し込んでも、自らが圧縮したアタッキングサードで発揮できる技術を持ち合わせないのでは、ゴールは近くて遠いのだ。

【間延びする選手間を改善せよ】

プレーエリアを下げると言っても、前からプレスをしないとかそういった話ではない。単純に言えば選択と集中の話しであり、コンパクトにするべきは押し込んだ先ではなく、ディフェンシブサードとミドルサードの間なのである。

今のユナイテッドの攻守を眺めていると、選手間の距離のバランスが非常に悪いように見える。ピッチを広く使う、というと聞こえはいいが、単にボールマンへのフォローアップがない状態でパスの選択肢は少なく、相手にチェックされればたちまち攻撃は遅くなる。

選手間の距離が長く、その場しのぎのフリーマンにパスを出すばかりではボールロストした時のポジションバランスは非常に悪い。意図がないビルドアップはミスをすればたちまち相手にチャンスを献上してしまうのだ。フリーマンを意図的に作ってパスを入れるのと、見つけたフリーマンにただパスを出すのでは雲泥の差がある。今のユナイテッドは明らかに後者のほうである。

パス&ゴーもなければフォローが遅いためにダイレクトパスもない。ボールの無いところでのフリーランも連動せず、基本的にはボールしかプレーしていない攻撃が大半だ。大きな歯車がいくつあろうとも、それぞれが孤立しては意味が無い。それを繋ぐ小さな歯車がなければうまく駆動することはないのだ。

【スモーリングに貫禄が出てきたか】

この試合、スモーリングが集中したプレーを見せていたことは唯一ポジティブな点であった。ヴィディッチの退団が決定したことで自覚が出てきたのか、時折貫禄を感じさせるディフェンスを見せていた。

このような覚悟と集中力を感じさせるプレーがどんどん出てこないようではまだまだ先は暗い。王者は過去のものだ。常に飽くなき向上心を持たねばならない。そう、今年のバロンドーラーのように、常にだ。

前任者は最後に結果を残して自信を持った発言をして引き継いだが、世代交代に失敗したことが浮き彫りになっている。選手がいくら揃っていようとも、過去の貯金と手腕でごまかしてきたツケが回ってきている感は否めない。もちろんクレヴァリーに関することなど、擁護ばかりでなく見過ごせない点も多々あるが、多大な金額と、短くない時間を使ってモイーズはじっくりと十数年に渡る長期政権を見据える必要がある。結果が保証されることはないが、1、2年の結果を大目に見ることで、その先長期に渡って偉大なるチームが見られるならば高過ぎることはないだろう。

ファギーの風圧がドレッシングルームで無くとも、自らに厳しい要求をし続けられる様な自立したプレーヤーは何人いるだろうか。今シーズンはファーガソンからの自立だ。それが出来ないプレーヤーはオールド・トラッフォードのピッチに立つ資格はない。スモーリングはそれに見合うプレーをここ数試合見せている。さて他の選手はいかがかな。


筆者名:db7

プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
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