久しぶりに4点奪って押し切った試合であった。内容は手放しに喜べそうなものではないが、徐々に改善しつつあるあたりは光が見えかけているのかもしれない。
【結果を出した人たち】
序盤はビルドアップがうまくいかずに、最前線のルーニーへとボールが入る場面がなかなか作り出せずに苦労していた。ミスからフリーキックをあたえて、見事に沈められてしまった。空高く待ったモイーズ不支持の横断幕にとってはナイスタイミングだった。
しかしついにとある方面からは待望の男が数字を残す。言わずもがな香川真司だ。サポートもあって緩いプレッシャーの中ボールを持つと、ニアで走りこむマタが3人も引きつけたおかげでルーニーがドフリー、あとは丁寧にクロスを入れるだけであった。ルーニーは飛びもせず、頭の高さに来たボールを合わせるのみ、ルーニーのゴールに1が上積みされ、香川には今シーズン初めてのアシストがついた。
2点目のきっかけとなった場面でも、カウンターからスルーパスを出してPKとなるファールを誘った。実質的に2得点に絡んだが、この日はこれまであまり見られなかった飛び出す動きも何度か見られ、徐々にではあるが動きを取り戻しつつある印象を与えた。
同じくマタも結果を出した1人だ。先述したように1点目ではルーニーをフリーにするニアへのフリーランで見事に3人を引き連れ、PKを獲得した場面ではカウンターの前線を走りファールを誘った。自身のゴールもボックス内ゴチャついたところで右足を振りぬき追加点。ビルドアップにやや物足りなさはあったものの、3点に絡んだのはマタだけだ。出し手のみならず、受け手としてスペースへ走りこむ場面が多かったのは香川同様いい傾向にある。
最後のゴールゲッター、チチャリートにも触れないわけにはいかない。チャンピオンズリーグに向けてルーニーを温存してピッチに入ったチチャリートはこれでもかと言わんばかりのアピールをしてみせた。ゴールシーンの動きもさることながら、精力的にビルドアップに絡み、絶妙なタイミングでボールを受けにスペースに降りてきてパスを引き出していた。ルーニーとは違って決定的なパスは出せないが、このように地道にパスを引き出す動きが非常に重要であり、ヴィラがあまり強く当たりに来なかったことを差し引いても非常に評価できる動きを短い時間に見せつけた。
【まだまだ物足りない】
チャンピオンズリーグを見越してのことだろうが、キャリックを温存して臨んだ前半は最終ラインからのビルドアップに苦戦していた。間延びしている感が強く、選手間の距離はまだまだ遠い。最終ラインがボールを持てども、彼らが出したいタイミングで出したいスペースに味方がいてくれなければ、苦し紛れのロングボールを蹴らざるを得ない状況が何度か見られた。この点はまだまだ改善しておらず、選手的な問題のみならずチームとして取り組まなければならない課題だろう。ビルドアップがスムーズにいけば前線が無理に降りてくる必要がなく、いい形でボールを供給さえすれば仕事が出来るメンツがいないわけではない。
守備ではめ込むことを見せないモイーズ、守備を見ていてもかなりアバウトな守備が目立つために、奪いどころがはっきりせず、攻守切り替えも計算できず奪ってからが遅い。もっともマタを獲得しておいて前線からそれが出来るとは思ってはいないのだが、攻撃で先手を取れなければ守備で先手を取れないことを意味している以上なかなか考えるものがある。誘発させた素早いカウンターがなかなかお目にかかれないのはこのような要因が潜んでいるからだろう。
前線のいいプレーがちらほら見えてきただけに、後ろの問題も同時進行で改善していきたいところだが、おそらくはシーズン終了まではあまり変化はないだろう。今期で退団が決定している主将ヴィディッチのパフォーマンスはこの所素晴らしいものがあるだけに、無駄にせず活かしてほしいものだ。
正直な所、後半早々のベンテケのシュートが空振りせずに決まっていたら怪しかった気もする試合であった。結果として4−1だが、圧倒したという印象はなく、いいところでゴールが生まれた試合だった印象だ。もちろん何よりも勝ち点3は欲しいものである。ただ批判を押しのけるだけの内容も欲しいところだろう。低迷し続けることを望まれてモイーズ続投と言われるようなことは跳ね返さなければならないからだ。
この試合は久しぶりに友人らと観戦して美味しいビールとゴールを味わうことが出来た。やはり何度あっても味わい足りない。今シーズンはあと何度味わえるのだろう。バイエルン相手に素晴らしい美酒を飲めることを期待したいものだ。
【試合ハイライト】
筆者名:db7
プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
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