エクアドルの特徴は今大会も、伝統となっている綺麗に整った4-4-2と連動したゾーン守備からのサイド攻撃となるが、そのサイドの人材は豊富だ。

まずはキャプテンのアントニオ・バレンシア。国内で頭角を現したころはミドルシュートが得意な両サイドの攻撃的MF、という印象であったがユナイテッドでの彼はまるで別人だ。今年、FIFAの調査で“世界最速のプレイヤー”に選ばれたとのことだが、今ではあまり細かなコンビネーションを使わずシンプルに縦へ突破し、強引に折り返す英国式スタイルを習得。それゆえ同僚である香川真司との相性は良いものとはいえなかったが、対峙する相手からすれば分かっていても止められないバレンシアの突破は厄介なことこのうえないだろう(最近、代表ではバランスを意識したプレーが目立ち、サイドバックで起用される機会も増えてきているが)。

続いてはジェフェルソン・モンテーロだ。17歳で代表に初招集され、早くからその将来を嘱望された彼の最大の武器は何といっても左サイドからのスピードと技巧を織り交ぜたドリブルだ。スピードと縦への突破を持ち味とするバレンシアとは異なり、縦への突破よりは鋭く中央へ切り込んでからフィニッシュに持ち込む形を最も得意としている。

また、控えにもオランダ・フィテッセでハーフナー・マイクと同僚のレナト・イバーラ、“エクアドルのネイマール"ことフィデル・マルティネス、FWと兼用のジョアオ・ロハスらタイプの異なるタレントを抱え、サイドバックにも右サイドには驚異的なスピードを持つパレデス、左サイドには高いテクニックと正確な左足が持ち味のベテラン、ワルテル・アジョビを擁しており、両サイドの縦のラインがエクアドルの生命線と言えるだろう。

その他、チームの予選トップスコアラーで、かつてイングランドやスペインのクラブに在籍し、大型ながら足元での独特のボールキープを武器に活躍したフェリペ・カイセド、ロシアでプレーする“皇帝”クリスティアン・ノボア、フィジカルに優れた潰し屋のセグンド・カスティージョなど国際経験が豊富な選手が揃う。ただカスティージョは先月行われたメキシコ戦でモンテスと交錯して負傷。モンテスが骨折し大会欠場を余儀なくされるほどの強い激突だったなか、カスティージョは何とかメンバー入りしたもののその状態が心配されており、エクアドル代表で唯一初出場から3大会連続の出場となるエディソン・メンデスが代替として起用される可能性もある。

亡くなったベニテスの穴は現在も埋められないでいるが、今年メキシコのパチューカへ移籍したエネル・バレンシアに対する期待が大きい。元々は快速のウイングだったがバレンシアだが、メキシコの地で本格的にFWへコンバートされるといきなり得点王に輝く活躍でチームを準優勝に導いている。