太平洋側に面し日本と同じく地震に悩まされる縦長の国チリ。炭鉱業が盛んで2010年に起きた落盤事故による33人の救出劇は記憶に新しいところだろう。

フットボールにおいては1930年の第1回ワールドカップに出場した古豪で、DFながら3年連続南米最優秀選手に輝いたエリアス・フィゲロアをはじめ、イタリア・セリエAで活躍したマルセロ・サラス、イバン・サモラーノらを輩出。地理的に黒人が少なく先住民系や白人の移民が多いこともあり、対人戦を重視するその激しいスタイルはアルゼンチンやウルグアイにやや近い。

小柄な選手が多いことでも知られており、今大会メンバーの平均身長176cm(日本は180cm)は最長188cmのベルギーと実に12cmもの差があり、32ヵ国で最も低い数値となっている。

サラス、サモラーノの「サ・サコンビ」が代表を離れて以降、長く得点力不足に悩まされ2002、2006年と本大会出場を逃していたチリも、アルゼンチン人マルセロ・ビエルサ監督の就任がこの国の転機となる。“戦術オタク”ビエルサの哲学である連動したハイプレスからの攻撃的トータルフットボールが、小柄だが技術が高く運動量と闘争心に溢れたチリの国民性に見事にフィット。ウンベルト・スアソという絶対的なエースの台頭もあり、南米予選でブラジルに次ぐ得点を記録して予選を2位で通過。南アフリカ大会でもベスト16を達成した。

大会後にビエルサ監督は退任し後任のクラウディオ・ボルギ監督も2012年に公式戦5連敗を喫して更迭されるが、ビエルサがニューウェルスの選手としてトップチームでプレーしていた時期に同クラブのユースチームに所属していたホルヘ・サンパオリが後任に抜擢されたことにより再び息を吹き返すことになる。