国内の古豪エストゥディアンテスの指揮官としてフアン・セバスティアン・ベロンを中心に据え2009年コパ・リベルタドーレスなど複数のタイトルを獲得していたサベーラ。見るからに地味な彼はマラドーナのような“劇場型”でもなければ、バティスタのような“バルサの後追い”でもない、自身が培ってきた知識と経験を基にした地道なスタイルを構築していく。

サベーラのベースは相手次第で3バック、4バックを使い分けながらも潰しどころ、奪いどころを明確に設定して選手に浸透させる非常に堅い守備だ。個人プレーに走りチームの和を乱す選手の存在を許さず調和を重視する一方で、選手の個性を尊重しながら適切な役割を与えるマネージメントにも優れた監督である。

自由が重んじられていたここ数年からサベーラ体制となり、地味ながらも規律を植え付けられたことでチームは結束。キャプテンに任命されたメッシも輝き始め、2012年に12ゴール、負傷もあった昨年も6ゴールをマーク。チームは前回4位と苦しんだ南米予選で最多35ゴール、失点はコロンビアに次ぐ15を記録し、危なげなく首位通過を果たすと、その頃には「代表では活躍できないメッシ」という声は全く聞かれなくなっていた。

バルサの後追いを止めたアルゼンチンだが奇しくも、スペイン代表でバルサのメンバーを主体とし、「100時間の練った戦術より健全なグループ」 を信念にワールドカップ制覇とユーロ連覇を成し遂げたビセンテ・デル・ボスケのように、「規律とドレッシングルームでの結束」によりメッシの再生とチームの威厳を取り戻したのだった。