さて、このワールドカップに参加するメンバー23人は地味ながらサベーラ色が色濃く反映されている。
エストゥディアンテス時代の愛弟子エンソ・ペレスやアウグスト・フェルナンデスらは、必ずしも万人が納得するレベルのタレントとは言えないものの、サベーラが就任した当初から代表に呼ばれ、その戦術をよく理解している選手である。守護神セルヒオ・ロメロもフランスの名門モナコで出場機会を失っており、「別のGKを呼ぶべき」との意見も少なくなかったが、サベーラのロメロに対する信頼は揺らぐことなくメンバー入りを果たした。
その一方で選出が有力視されていたニコラス・オタメンディを最終選考で外し、予選にはほとんど出場していなかったベテランDFマルティン・デミケリスをサプライズ選出したが、3連覇を達成したイタリアの名門ユヴェントスでゴールを量産し、国民そしてロベルト・アジャラ、アリエル・オルテガら往年の名選手までもが復帰を熱望したカルロス・テベスの招集は頑なに拒んだ。
メッシとの確執、その強い個性をサベーラ監督が嫌ったなどの憶測が飛び交うが、実際には絶大な権力を持つアルゼンチン・サッカー協会フリオ・グロンドーナ会長に対し過去に行った異議申し立てが影響しているとの説が有力だ。ただサベーラとしても攻撃陣はメッシの他にもアグエロ、イグアイン、ラベッシら優秀な選手が揃っており、充実したチームが結果を残すなかでテベスを必要としなかったとも言えよう。