狂気の革命家ペップ・グアルディオラは毎週のように我々に驚きを提供してくれる。
今季もはじめから3バックを基本布陣とし、更にはそこにいわゆるCB的な選手を置かないというやり方で多くの分析家たちの興味を引いた。今はというと、アラバの離脱で小休止しているところである。しかし、怪我人の発生により戦術の幅を狭められたペップは、奇しくも怪我人の発生をまた新たな可能性を試すきっかけへと変えた。
それをお目にかかることができたのはアウェーのヘルタ・ベルリン戦。今やペップのチームには不可欠となっていたキャプテン、ラームの離脱後3試合目で、メンバーやシステムはあまり変わらないいつも通りの面子だったが、ピッチ上で起きていることは少し普段とは違うようであった。
それはフォーメーション上ではいつもの左ウィングに置かれていたリベリのプレー位置から確認することができた。国内では向かうところ敵なしのバイエルンは圧倒的なポゼッションで試合を制圧し、ビルドアップを進める中で、今季からチームに新たに鎮座した指揮者シャビ・アロンソの隣にリベリはいたのである。
ペップが「指導してきた中で最も知性がある」と評したラームの不在はアロンソの存在だけでは補えきれないと考え、代役を立てたわけである。
そもそもペップがなぜそれほどラームを評価しているのか。それは様々な方法でボールを「素早く」動かす技術である。
ペップが標榜とするサッカーの中でボールの動きが止まる、などはタブーである。かの有名なクライフの「ボールを動かせ、ボールは汗をかかない。」という発言からもそれがわかる。ラームは元々SBというポジションでタッチラインを背にし、180度しか見えない中で、素早くパスコース、ドリブルコースを見つける判断スピードに優れており、ボランチで360度見えるようになってもその能力は高く評価されているはずだ。それこそがペップが「頭がいい」と評価している理由の一つでもあるだろう。
またラームは運ぶドリブルができる選手である。相手を抜くなど仕掛けるためのドリブルではなく、運ぶドリブルというのはビルドアップの上で不可欠である。