テーブルに案内されてから、配られたメニューを見て驚愕した。安い!パリのカフェで瓶コーラを頼んだ時に、3.3ユーロ(およそ384円)かかったことを考えると驚愕の安さであった(ちなみにトゥールーズの場合、コーラ1.5ペットボルが1.6ユーロ(およそ186円)で売っていた。パリは非常に物価が高い)。

19ユーロ(およそ2212円)でコース料理(パリジャン曰く定食みたいなもの)を頼めるので、おばちゃんギャルソン(女性だと正しくはセルヴーズ)に料理を注文した。おばちゃんはとても元気な方で、早口な英語で料理の説明をする。テーブルクロスに注文を書き、そそくさとシェフに注文を伝えに行った。メモしないで頭にメニューを叩き込む姿を見て、日本では見られない情景だと感心した。

シードルがワイングラスにそそがれ、オードブルが運ばれてくる。生ハムでトロトロのチーズとグリーンピースを春巻きのように包んだ料理が出てきた。ナイフで切ってみると、チーズがとろけ出し匂いも香ばしい。口に入れた瞬間、こんなに美味いものがあるのかと感動を覚えた。

オードブルを食べ終わった頃に、隣のパリジャンが話かけてきた。見知らぬ相手と相席になることが多い大衆食堂では、客同士で世間話を楽しむのも醍醐味だ。私はEURO取材でフランスに来ており、このビストロには有名選手が若い頃に訪れていたから来たと伝えた。すると、相手も「祖先はフランス革命で勇猛果敢に戦い命を落とした」と語ってくれた。世界史で学んだリアルがそこにはあった。

40半ばの紳士は「サッカー選手もよく来ていたよ」と教えてくれた。最近の選手ではユース時代にクレマン・シャントーム、ママドゥ・サコー、アドリアン・ラビオらが来たらしく、青春時代をパリで過ごしたディディエ・ドログバ、ウィリアム・ギャラス、ニコラ・アネルカらも食事したという。フランスのレストランやカフェで来ていた選手を聞き込みすると、誰もが知っているビッグスターが来店していたりする。もはや感覚が麻痺してしまったが…。

【次ページ】いざ、メインディッシュ!!