時代を彩った名選手たち

メスというクラブの強みといえば、ひとつは「育成」。もうひとつは「ファン」である。

フランスには育成の名門と呼ばれるクラブがいくつもある。ル・アーヴル、カンヌ、ナント、ストラスブール、ナンシー、RCランス、ソショー。そして近年ではトゥールーズ、PSG、リヨン、レンヌなどが力をつけている。

その中でもメスは比較的早い段階からアカデミーに力を入れてきたクラブである。

他のクラブと比べると、「有望な14〜18歳の選手を引き抜いて1〜3年でプロに育て上げる」ことが得意で、前頁のロベール・ピレスもその形だ。その後もルイ・サア、フランク・リベリ、パピス・シセ、エマニュエル・アデバヨル、リュドヴィク・オブラニアクなどがこのクラブから羽ばたいていった。

そして、近年で最高の傑作といえばミラレム・ピャニッチだ。

彼はボスニア・ヘルツェゴビナ代表であるが、出身地はルクセンブルクである。そのため国境の町メスとは非常に近く、14歳で彼はこのクラブを選んだ。

17歳でプロデビューを果たした彼はいきなり活躍を見せ、レギュラーに定着。一気にその名前を世界に知らしめることになる。筆者は偶然彼のデビューとなったPSG戦を見ていたが、あまりにも若さを感じさせないプレーぶり(技術的な話ではなく判断や表情)から試合後に年齢を見て非常に驚いたという思い出がある。

現在はセネガルにトレーニングセンターを設けるなどアフリカの才能発掘にも努めており、ジャフラ・サコ(ウェストハム)、サディオ・マネ(リヴァプール)、カリドゥ・クリバリ(ナポリ)が出身者だ。

セネガルにあるアカデミー・ジェネレーション・フットは2000年からメスのパートナーとして才能発掘に努めている。サコとマネはここの卒業生で、「メスが作った選手」と言っても過言ではない。

さらにベルギーにはRFCセレインというチームがあり、ここはメスが過半数の株式を持っている「衛星クラブ」だ。多くの選手がそちらに貸し出され、修行を積んでいる。チェルシーのような強者ならともかく、メスのような小クラブがそういうものを持っているという点において、彼らがどれだけ育成に力をかけているかがわかるだろう。

また、Jリーグのファンから見れば、あのパトリック・エムボマとアン・ジョンファンが短期間所属したということも記憶にあるだろうか?

エムボマはガンバ大阪に来る1年前、PSGからメスにレンタル移籍していたことがある。

アン・ジョンファンは横浜F・マリノスを退団したあとこのクラブへ移籍し、半年間だけ所属しデュイスブルクへ移っている。

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