前述でクォン・スンテのストロングポイントをいくつも挙げたが、実は、この韓国代表経験者には大きな不安がいくつも存在することも断言したい。異なった見解はあるだろうが、少なくとも筆者は、自信を持ってそう言える。

「何を言っているのかわからない」と首を傾げる者は決して多くないだろうが、ある程度、ゴールキーパーを経験したものであれば、その問題点を見つけることはそう難しくないだろう。

まず、一点目は、「シュート時における、キャッチングとディフレクティングの選択」である。

ボールに対する反応の良さも彼の特長であるが、「ボールには反応したが、正確にはじきだせない。中途半端なクリアリングが終わる」というケースが、実は非常に多い。

別の表現にするならば「防ぎ方を正しく決断する前に体が動いてしまう」といった具合だ。これは反応速度が高く、ある程度余裕を持って、ボールに体を合せられるゴールキーパーによくありがちな現象ではあるが、彼もその一人と言える。

FC東京との開幕戦での失点シーンは記憶に新しいかと思うが、この原因の一つも、ここにある。


試合後のインタビューで、彼は「シュートを打たれたとき、思ったよりもボールスピードが速かった。キャッチでミスをするよりはパンチングで強くはじこうとした。判断ミスだった。しっかりキャッチできていれば問題なかった。これをきっかけにより良い判断ができるようにしていきたい」と振り返っていたが、「長所が生んだ失点」である。

あのシーンでは、筆者の見方では、「強くはじこう」という彼の選択肢が間違いだったのでなく、むしろ、はじき方に問題(自身の前方ではなく、ゴールラインに逃げる受け流し方ができていれば、事なきは得ていたはず)があったように思ったが、彼の見方であれば、「自分の実力であればキャッチができた」ということであろうか・・・。

ゴールキーパーのプレーを語る上で、失点シーンを取り上げてしまうと、どうしても短絡的な印象になりがちだが、あくまでもこれは代表的なシーンの一つである。

他に使いやすい動画がないため説明がし難いのが心苦しいが、このシーン以外にも、「防ぎ方の判断を誤った小さなミス」はここまで散見されている。とりわけ、開幕戦に関しては、対クロスボール処理の際に、何度も見られたので、「いつか失点に繋がるのではないか」とヒヤヒヤしていた者も決して少なくないはずだ。

また、この「反応の良さが生む弊害」については、また別の面での大きな問題をはらんでいるのだが、それはまたいつかの機会に取り上げるとして、最後に、最大の懸念点を述べたい。

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