――続いてCBです。こちらについてはいかがでしょう?
順当にいくと、鹿島アントラーズのCBコンビ、昌子源と植田直通ですかね。
特に前者については全試合に出場し、小笠原満男、遠藤康が欠場時にはキャプテンとしてもチームを引っ張っていました。リーダーとしての自覚が芽生えたシーズンになったと思います。ただ…
――ただ?
「パフォーマンスが悪かった」というわけではないのですが、高い能力を見せてくれる一方で、少々残念なシーンも多かったです。
今季は、昨季に比べて周りを活かしたスマートな守備が伸びた印象ですが、悪く言えば、「大人しくなった」という感じがしました。
対人戦やシュートブロックの場面において、自分が行き切るべきポイントで反応が遅れてしまいピンチに陥るケース。
他にもセーフティファーストでも十分な局面で、欲を出してボールを奪い切れずというシーンなどは散見しました。守備から攻撃への切り替え時なども同様でしたね。
今年A代表で試合に出場するまでは、そんな感じもなかったんですが、彼の中で何か意識が変わったのかもしれません。こればかりは本人に聞いてみないと何ともですが…。
いずれにせよ、これらの現象はその向上心の高さ故でしょう。
「センターバックとして、もう一つ上のレベルのプレーを目指しているからこそ」という意識が強いからこその結果ですから。
ただ、来季(Jリーグでプレーするのであれば)は、安定感を追い求めて欲しいです。個人的には、さらに上のステージに行くのはその後で良いんじゃないかなと考えています。
海外に出れば、当然対峙する選手のレベルも上がり、一つのミスが命取りになるわけですし、今のプレースタイルのままでは少々不安な面があります。期待しているだけにあえて厳しいことを言いますが…。
――なるほど。彼の海外挑戦を望んできたカレンさんならではの考えですね。他の選手はどうでしょう?
谷口彰悟(川崎フロンターレ)、マテイ・ヨニッチ(セレッソ大阪)、中澤佑二(横浜F・マリノス)、大井健太郎(ジュビロ磐田)は、必ず皆が挙げるでしょう。
また、これは個人的な好みとも言えますが、奈良竜樹(川崎フロンターレ)、高橋祥平(ジュビロ磐田)は大きく伸びましたよね。
時折、熱いプレーがラフプレーに変わってしまう点が共に気になりますが、そういうセンターバックは日本に少ないタイプなので、そこは今後も活かして欲しいです。
後は、中谷進之介、中山雄太の柏レイソルの若きセンターバックも非常に魅力的で、今季もパフォーマンスも良かったですが、前述の選手たちに比べるとやや劣る印象です。
遠藤航(浦和レッズ)、平岡康裕(ベガルタ仙台)などは、チームの状態が良くない中でも要所を締める守備が光っていました。
――序盤戦にベストイレブンを選考した際には、三浦弦太、ファビオ(共にガンバ大阪)の名前も挙げていましたが?
はい、序盤戦は本当に良かったです。チームの調子が決して良くない中でも後ろを支えていましたからね。ですが、シーズン途中からスケールダウンしてしまったなと。
三浦は全試合フル出場こそしましたが、思い切ったロングフィードやアグレッシブな守備などの持ち味が徐々に消えていきましたし、失点に直結するようなミスがチームの下降と共に増えていきました。
個人的にも期待している選手なので、来季は挽回と言わずに覚醒して欲しいです。ポテンシャルを考えれば、W杯終了後にA代表の常連になっていても不思議ではないので。
ファビオはあの身体能力の高さが本当に魅力的で、シーズン前半戦は本当にサプライズ的な活躍だったのですが、怪我で後半戦を棒に振ってしまったのがただ残念です。
――以上を踏まえると?
まだ名前を挙げていない選手もいるのですが…ここは谷口とヨニッチにしたいと思います。
谷口は元々はボランチの選手ですが、本当にトータルバランスの高さを見せていました。
前輪駆動型のチームがわずか32失点でシーズンを終えられたのは、彼のディフェンス統率力や戦術理解力、カバーリングセンスがあってこそでしょう。
ボールを奪ってからすぐに攻撃に転じる球出しの上手さや今季7得点を奪ったヘディングも強さも光っていました。スピードやフィジカルコンタクトの面で言えば、他に優れた選手もいますが、総合点では今季は「No.1」でした。
彼と同様にシーズンを通して存在感を見せてくれたのがヨニッチです。
「2年連続のKリーグベストイレブン」という看板を背負ってのJ初挑戦でしたが、下馬評以上のパフォーマンスだったのではないでしょうか。187cm・83kgと恵まれた体格にスピードとクレバーさも兼ね備えているんですから、相手チームは本当に手を焼いたと思います。
また、彼のパートナーはシーズン途中に、山下達也から木本恭生へと代わりましたが、彼らが共に高評価なプレーを見せられた理由の一つとしても、彼の存在を挙げられると思います。
さらに、今季のセレッソ大阪は、セットプレーが一つのストロングポイントでしたが、そこでも彼が重役を担っていたことも触れておかなくてはなりません。
「ヨニッチにボールさえ合えばほぼゴール」という印象すらあり、実際に決定率も40%を超えていたようです。しかし、改めて振り返ってみると、ヨニッチ、木本(山下)、杉本、ソウザ、山村がターゲットとして君臨するセットプレーは本当に恐ろしいですね…。
ということで、私が考えるベスト5はこんな感じです。
1位:谷口彰悟(川崎フロンターレ)
2位:マテイ・ヨニッチ(セレッソ大阪)
3位:昌子源(鹿島アントラーズ)
4位:中澤佑二(横浜F・マリノス)
5位:大井健太郎(ジュビロ磐田)