――さて、次は右SBに移ります。こちらのポジションの印象はいかがでしょうか。
SBはチームによって求められる役割が微妙に違いますし、何を評価するかによって選考にも影響が出やすいので、案外難しいですね。
決定的な仕事をどれだけしたか、ミスが少なく安定した仕事をどれだけしたか、それが攻撃なのか、守備なのか…。賛否両論となるでしょう。
――カレンさんの基準でお願いします。
特に目に止まったのはエウシーニョ(川崎フロンターレ)です。
チームのスタイル自体もオリジナリティに溢れていますが、エウシーニョのプレーは他のサイドバックとは一線を画していました。とりわけ攻撃面ですね。
かつてドルトムントを率いていたトゥヘルや、現在シティの監督を務めるペップなどは、サイドバックに「ダイアゴナルの選択」を求めることが多いですが、それに応え得るサイドバックはJリーグにはまだ少ないです。しかし、その中で実践できていたのがエウシーニョでした。
――「ダイアゴナルの選択」と言うと?
主に二つの局面があります。
ボールを持っている時には「サイドから斜め前に打つくさび」と「ドリブルでのカットイン」。
ボールを持っていないところでは、逆サイドでチャンスを作っている時に「ペナルティエリアに斜めに侵入してファーサイドでボールをもらう動き」です。
海外に目を向けると、マンチェスター・シティのカイル・ウォーカーなどが得意としているプレーですね。
これらの選択を取れるサイドバックがいれば、チームは厚みのある攻撃を実現しやすく、現代サッカーではそれを戦術の一つに取り入れるチームも多くなってきていますが、川崎があの攻撃スタイルを敷けたのはエウシーニョがいてこそだと思います。
守備面ではポジショニングの面などで雑さはありますが、それを補って余りある貢献を見せてくれました。
彼のような選手がいると、相手チームの左サイドの攻撃力も削ぎますし、あらゆる面で好影響を与えていたと思います。
――他に気になった選手はいましたか?
鹿島アントラーズの西大伍も良かったですね。
元々攻撃的な選手ということもあり、サイドバックの中では視野が広く、攻撃時におけるポジショニングやパスワークでの組み立てはチームを助けていました。また、強靭なバネもあり、フィジカルコンタクトも強いので、対人戦では攻守両面で長所を発揮していました。
後は、急成長を見せた小池龍太(柏レイソル)。
決定機への関与はそれほどありませんでしたが、横浜F・マリノス戦で、当時絶好調だった齋藤学を「シュートゼロ」に追い込んだ試合が代表的ですが、彼のサイドを破られた試合はほとんどありませんでした。スピード、運動量、マーキング能力は、FC東京時代の長友佑都を想起させます。
それとセレッソ大阪の松田陸も印象的でした。
サポーターでもその評価は分かれるようで、重要なところでマークを外したり、不用意なファールもたしかにありましたが、「嫌らしさ」で言えば、Jリーグ最高クラスでしょう。相手チームからすると、存在するだけで嫌な選手だと思います。
そして、残念なところとしては、高橋峻希(ヴィッセル神戸)です。
非常に安定していて「今季は大きな成長が期待できそうだな」と見ていたんですが、途中で故障離脱してしまったのが悔やまれます。
ちなみに、この部門は右WBでプレーしていた選手も該当するんですよね?
――はい、該当します。
となれば、ジュビロ磐田の櫻内渚も面白かったです。
スタミナが特長的なので「質より量の選手」と思われがちですが、クロスの精度も良く、攻撃面でもより存在感を見せられる選手になったと思います。
また、シーズン途中からの加入でしたが、ベガルタ仙台の古林将太も好印象でした。サイドバックでは課題が見えやすいですが、ウィングバックの起用でしたので、彼のクロスやドリブルが本当に活きていましたね。
後はチームは降格していましたが、横浜F・マリノスからヴァンフォーレ甲府に期限付移籍で加入した高野遼も面白かったですね。
以上をまとめて、こんな感じの順位にしたいと思います。
1位:エウシーニョ(川崎フロンターレ)
2位:西大伍(鹿島アントラーズ)
3位:櫻内渚(ジュビロ磐田)
4位:小池龍太(柏レイソル)
5位:松田陸(セレッソ大阪)