真逆のスタイルを標榜しながら、理想は似ている?両チーム
ポゼッションを志向するチームが多くなったり、またはそれを意識して対抗するための策や戦術を採ったりする。男女問わず、現在のサッカー界にはそのような流れがある。それはバルセロナの影響が強く、それは多くのサッカー人が理想とするモノだったからだ。
ただ、全世界から称賛された最強バルセロナを作り上げ、2009年に3冠に導いた指揮官=ジョゼップ・グアルディオラ(現・マンチェスター・シティ監督)は「理想的な守備をするために、連続した15本のパスが必要なんだ」と常々言っている。
日本ではバルセロナの攻撃のコンセプトに注視するチームや指導者が多い。一方ドイツの新世代の指導者たちは、バルセロナの守備の部分をコピーした。
それがユルゲン・クロップ(現・リヴァプール監督)時代のボルシア・ドルトムントが使用した“ゲーゲン・プレス”であり、現在のRBライプツィヒを始めとした新興チームが掲げる“パワー・フットボール”である。昨年初めてJ1を制した川崎フロンターレが「失ったボールを5秒以内に奪い返す回数」が最も多いチームだったというデータもある。
ポゼッションサッカーを実践するためにボール支配率を上げるには、技術的なミスを減らすことは当然のごとく重要だが、それと同時に「奪われたボールを即時奪回」する必要がある。そのためにはコンパクトな陣形を作り、ボールを奪われた瞬間に複数の選手がプレスをかけなければいけない。そして、その陣形を作って攻守を連動するためにも、パスを繋がないといけないのだ。
この日対戦した伊賀は、野田朱美前監督の下でポゼッションサッカーを標榜していたものの、昨季は1部最下位で降格した。今季から6年ぶりに大嶽直人監督が復帰し、相手陣内から積極的にボールを奪いにいくプレッシングサッカーにトライしている。そのサッカーは、「攻撃的か?守備的か?」を問われたら、「攻撃的」。ただ、そこにボールの有無は関係がない。「オフェンシブ」ではなく、「アグレッシブ」なサッカーと表現できる。
現在のバニーズと伊賀は、真逆の地点から始まるサッカーを志向しているのかもしれないが、理想や完成形は意外と近いのではないだろうか?相手陣内でボールを即時奪回できる伊賀は、自然とバニーズを押し込み、野田監督時代の理想となるポゼッションサッカーを披露していた。バニーズがこのレベルで理想を体現するには、伊賀の激しいプレッシングの中でも精度を落とさないプレーが求められる。