質疑応答での混乱

田嶋会長のコメントの後、各記者による質問が続きました。会見自体は約1時間の長さでした。

この中で田嶋会長が繰り返していたのは「3月のベルギー遠征まで、JFAはハリルホジッチ監督を全力で支える事だけを考えていたし、自分も監督交代は全く考えていなかった」という事です。組織の原則論として「万が一の事態を想定する必要はある」という補足も含め、これは恐らく本当でしょう。もし去年12月のE-1選手権での日韓戦敗北で可能性を想定していたら、冬のメルカートで「W杯指揮経験のあるベテラン外国指揮官」をリストアップしていたはずです。

ただ、他の部分では田嶋会長の混乱が目に付きました。いわゆる「回答漏れ」が目立ったのです。西野新監督の任期についての質問を聞き飛ばし、別の記者から改めて問われて「ロシアW杯終了まで」と答え直す、ハリルホジッチ前監督とともにボヌベー・ルグシッチ・モワンヌの3人の外国人コーチとも契約を終了することも後から付け足す、等々。後者についてはJFAの公式サイトでも9日中に発表できませんでした。

そして今回の交代劇の本質、「なぜ西野氏が適任なのか」という点も田嶋会長の説明は不可解でした。3月の苦戦を見て「ハリルホジッチ監督のまま日本代表がW杯で惨敗するのを座視するわけにはいかない」と思ったのはともかく、「フル代表自体の指揮経験がない西野氏だと『日本が勝つ可能性を1%でも2%でも上げることができる』」根拠がありません。

「現状の危機に対応したチーム改革」なら内部を見てきた手倉森誠コーチがいます。それでも西野氏を選んだ理由は「技術委員長としてハリルホジッチ監督を支え続けた『ロイヤリティ』」というのが、田嶋会長の答え。プレー経験のない私が言ったらおかしいですが、「組織への忠誠心」があれば代表監督は務まるのですか?手倉森コーチに固辞されたという報道もありましたが、代表監督の座を「貧乏くじ」にさせてしまった責任は重大です。

2年前の会長選の時に書きましたが、田嶋幸三は日本サッカー界の代表として十分な資質とヴィジョンを持つ「教育者」です。その田嶋会長ですらピントを外した回答、理由になっていない説明が続くのは、今回の監督交代の唐突さと問題の根の深さを示しています。個人としてはその点もショックでした。

「田嶋vs原!史上初のJFA会長選挙が大接戦になりそうなワケ」
(2016年1月28日付)

https://qoly.jp/2016/01/28/column-nakanishi-jfa-presidency