「INF流基礎づくり」とは?

では、思考力以外はINFでは何を育てているのだろうか。

それは「考えること」、「積極的に参加すること」、「継続して努力すること」。いわば「教育」の要素である。そして、それはプロになってからも進化し続けるために大事な要素である。

2つ目以降は「選択肢を増やす」トレーニングだ。「プロになった時、選択肢は多いに越したことはない」からだ。より多くの部位で自由にボールタッチできるように(例えば両足が使えたら悪いことではないだろう)、シチュエーションに応じていろいろなテクニックが選べるようにトレーニングする。

自分自身の選択肢だけでなく、味方の選択肢を増やすことも大事だ。オフ・ザ・ボールの動きを鍛えることは味方のパスの出しどころを増やすし、ボールを奪うためにポジションに戻ることは自分と味方の攻撃機会そのものを増やす。

守備の話でラファルグ氏が誇らしげに挙げていた例がエンバッペだった。「彼(のような特別な選手)にもキチンと守備のポジションに就かせ、一定の守備貢献を求めた成果が今に繋がっているのだ」と。実際彼はモナコでヴァレール・ジェルマン(現マルセイユ)、PSGでアンヘル・ディ・マリアというアタッカーの中ではかなり守備貢献度の高い選手からポジションを奪っている。もちろん攻撃性能の高さがあってのことではあるが、彼らを外しても心配ないくらいの守備力がなければ控えのままだっただろう。守備貢献によって出場機会、言い換えれば成長機会を「獲得した」と言える好例だ。

オフ・ザ・ボールは氏曰く、「状況を“ほどほどに厳しくして”鍛える」のだという。例えば攻撃VS守備の練習で攻撃者の人数を少なめにするといった風にだ。もちろん、これはチームの攻撃者、守備者それぞれの能力レベルによる。攻撃的な選手が相対的に強力なチームなら攻撃者の人数をより少なくすべきだし、守備的な選手が相対的に強力なチームなら同数でのデュエルを行うだろう。ここも指導者の力量が問われるところだ。

ラファルグ氏が強い調子で述べていたのは「ほどよい競争が成長を促す」ということだ。「指導者は感情的になりやすい状況のプレー、つまり必死になりやすい、難しい状況でのプレーをチームレベルに応じてやらせなければならない」と。