新監督が打ち出したコンセプトは?
冒頭でも触れた通り、今季よりクラブ史上初となる欧州出身のヴァイラー監督を招聘した鹿島。
ヴァイラー監督はコロナ禍のため開幕前の合流が叶わず、開幕直後は岩政コーチが代わりに指揮を執っていた。
岩政コーチ、そしてヴァイラー監督はここ2年クラブが推し進めてきた路線とは異なるスタイルを標榜している。ポゼッションスタイルと決別し、戦況によって臨機応変に戦う原点回帰の戦術だ。
もともと鹿島は、巧みなカウンターとセットプレーの得点力、リードをしたたかに守り切るスタイルで数多くのタイトルを獲得してきた。その伝統芸とも言える戦術に変化の兆しが見られたのが、2020シーズンだった。
ザーゴ氏を新監督に迎えると、最終ラインからのビルドアップを約束事としたポゼッションスタイルに舵を切った。ザーゴ体制は2年連続で開幕から調子が上がらず、徐々に巻き返した1年目は5位でリーグ戦を終えたものの、2年目(2021シーズン)は序盤戦で解任の憂き目にあった。
コーチを務めていた相馬直樹氏が後を受けて監督に就任すると、ポゼッションスタイルを継続しながら守備の強化に着手。コンパクトな守備ブロックの構築と前線からの連動したプレスを落とし込んだことで失点は減少し、上昇気流に乗ったチームは4位でフィニッシュしたのだった。
新たなスタイルの構築を目指した2年間を経て、フロントが選んだのは原点回帰の戦術だ。
ビルドアップには必要以上にこだわらず、空いたスペースとフリーの味方へどんどんパスを供給し、直線的にゴールへ迫る。2トップがサイドに流れてチャンスメイクにも関与し、サイドアタックを軸に中央突破を織り交ぜて崩していく形は、シンプルだが効果的だ。