数年前にサッカー界で大きな話題を集めたパシフィック・メディア・グループ。数々のクラブを買収したことで存在感を高めたものの、その多くが今苦難に陥っている。
パシフィック・メディア・グループ(PMG)は中国系アメリカ人のチェン・リー氏とアメリカ人のポール・コンウェイが中心となって設立された投資会社。
ホテルや投資銀行でのキャリアを積んだ彼らがサッカー界に進出し、あの「マネーボール」のモデルとなったことで有名なビリー・ビーン氏が参加したことで「画期的な経営が行われる」と期待され、日本のメディアでも欧州サッカー界の革命的企業だと取り上げられていた。
2017年からサッカーに進出したパシフィック・メディア・グループが買収したのは、バーンズリー(イングランド)、カイザースラウテルン(ドイツ)、ナンシー(フランス)、デン・ボッシュ(オランダ)、エスビャウ(デンマーク)、FCトゥーン(スイス)、そしてオーステンデ(ベルギー)である。
ところが、一番最初に買われたバーンズリーはそれから3部へと降格し、FCトゥーンも2019-20シーズンにプレーオフで敗れて2部へ。
そして今季オーステンデはベルギー2部へ降格し、デン・ボッシュはオランダ2部で20チーム中19位(降格のルールがないため残留)、エスビャーウも2部から3部へと落ちており、さらにナンシーは財政難のために昨日5部降格処分を宣告されている。
カイザースラウテルンのみが今季の買収後に3部から2部へ昇格しており、唯一パシフィック・メディア・グループの下でカテゴリを上げているという状況だ。
いわゆるマルチオーナーシップ(一人のオーナーが複数のクラブを所有すること。シティ・グループやチェルシーが代表的)にはメリットもあるものの、パシフィック・メディア・グループの場合は経営難のナンシーを助けるために他のクラブの資金を使う(選手を高値で借りるなどの手法で資金を流用していたという)など、ファンや関係者からの怒りを買う出来事も多かったという。
オーステンデではスタッフやサプライヤーへの支払いが滞っていたことも伝えられており、遠征先のホテルがチームの予約を拒否したという報道もあったほど経営にも余裕がなかったようだ。
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残念ながら多くのクラブを苦難の谷に叩き落としているパシフィック・メディア・グループ。「数字やデータを使った効率的な経営によってクラブを成長させる」という触れ込みであったが、いまのところは成功していないようだ。