31年前と新たな歴史

31年前の1993年5月15日。創設したばかりのJリーグが開幕し、父・水沼貴史さんが国立競技場で行われたヴェルディ川崎との一戦に横浜マリノスの先発メンバーとしてプレーした。

31年前の開幕戦はV川崎が前半に先制し、横浜Mが後半に2得点を挙げて2-1で記念すべき決戦を制した。奇しくもこの日開催された開幕戦も同様の結果で2-1で横浜FMが勝ち星を挙げた。

水沼は「(父と)同じような状況でピッチに立てたというのは良かったと思います。(31年前の)開幕戦と同じスコアで終われたので、また面白いなと思います。でも自分たちとしてはしっかり勝ち切りたかった。もっと圧倒したかったし、自分としても、もっと自分のプレーを表現できたら良かった。自分としては感慨深さもあるし、悔しさもあります」と複雑な心境を吐露した。

この日は試合前にJリーグの生みの親でもある川淵三郎初代チェアマンがスピーチを行った。スピーチ中に感極まり、涙声で東京Vの16年ぶりとなるJ1復帰を労うシーンがあった。

そのスピーチを耳にしていた水沼は「昔のリーグから応援してくださっている方々、支えてくださっている方々にとっては、あの日を思い出せる人もいらっしゃると思います。あの日を知らない若い世代の応援してくださっている人たちからしても、きょうは『あぁこういう歴史があったんだな』と思ってくださるような演出だったんじゃないかなと思います。こうやって取り上げていただいて、昔を知らない人にとって『父が1番最初に出てたんだ』というところとか。そういう意味では僕自身も嬉しい気持ちもあります。その中で勝てたというのもすごく良かった。いまたくさんの方々に、歴史を築いてくださった方々に対しても感謝したいと思いますし、いま自分たちがこうやってピッチでプロ選手としてやれているところにも感謝をしながら、これからの世代に繋いでいく。10年後、20年後、30年後とJリーグがもっとより良いリーグ、世界に誇れるリーグになっていけるような、そんな歴史の一部になれたんじゃないかなと思います」と先人に感謝しながら新しい1ページを書き加えた。

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この日は気温5.6度かつ降雨という身が凍えるような中で試合が開催されたが、5万3026人の観衆が集まった。31年前の開幕戦の観客5万9626人に勝るとも劣らない熱い雰囲気の中で激戦が繰り広げられた。31年の間に先人たちが積み重ねたレガシーは色褪せず、日本サッカーの未来を明るく照らし続けている。

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