浦和レッズのFW興梠慎三が31日、今シーズン限りでの現役引退を発表した。

歴代2位となるJ1通算168得点。日本代表でこそ同期の岡崎慎司のようには活躍できなかったが、彼の天才的な能力は同業の選手たちからは高く評価されていた。

浦和レッズで共にプレーした梅崎司(大分トリニータ)は、Qolyが2022年に実施したインタビューで「あれ(興梠)は日本一だと思ってます」と話し、そのすごさを詳細に説明してくれた。

「効果的な、チームにとってチャンスを作り出すようなプレーを、相手にとって一番嫌な選択をしてくる。フィニッシャーとしてだけではなくて起点となるのか、自らまずワンクッション置くのか、もしくは反転してそこからポストプレーをするのか。

大半の選手は(ボールを受ける際に)後ろ向きなんでまずはしっかり落とすことを大事にする。ビハインド(背後)を取ったシャドーやボランチの選手に落としてそこから展開するというのがセオリーだとは思うんですけど、彼は自らハーフターンなどをして一人でやっちゃう。だから相手も戻りきれない。

『チームがスピードアップを加速できる』ということができる選手はそうそういない。大迫(勇也)選手(ヴィッセル神戸)とか本当にトップの選手くらいしかできないのかなと思いますね。

そこの質も高い。判断がオートマチックというか、自分でキープをしなきゃいけない時なのかワンタッチで落とすべき時なのか、もしくはさっき言ったように自分でスルーパスを自ら出していく時なのかの(判断が)…『駆け引きの達人』ですよね。そこからフィニッシャーとして入っていけるセンスも抜群。あれは一人で何役してるんだろうっていう感覚です」

また、パリ五輪の最終選考からは漏れたものの次代のエース候補として大きな期待を受ける20歳の内野航太郎(明治大学)は、今年行ったインタビューで18歳も年上の興梠について以下のように語っていた。

「興梠選手の映像をよく見ていた時があります。背はあまり大きくないけど、『駆け引きで外してゴールを決める』っていうところが(参考になる)。(自身は)興梠選手よりも体は恵まれている(185cm)ので、あの駆け引きをやれば『デカい選手があれもできるんだ。じゃあ止められないじゃん』となるのかなと思っています」

まるっきり世代が違う二人が揃って口にしたのは「駆け引き」という言葉。これこそが身長175cmと体格的には決して恵まれていなかった青年をここまでの選手にした秘訣なのであろう。

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世代を超えて選手たちから絶大な支持を受ける興梠慎三。引退後は「いずれは監督の道に進みたい」とのことで現場でどのような選手を育ててくれるのか楽しみであるが、今は天才の残されたわずかな時間を堪能したい。

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