[J1昇格プレーオフ(PO)準決勝、ファジアーノ岡山(5位)3-0モンテディオ山形(4位)、1日、NDソフトスタジアム山形]

岡山が山形を3-0で一蹴してJ1昇格PO決勝へ駒を進めた。試合開始早々から激しいプレッシャーで山形を圧倒し続け、前半31分にDF本山遥が右足で先制弾を決めると、3分後にはMF木村太哉(たかや)が放ったシュートがMF岩渕弘人の右ヒザに当たって2得点目を奪取。後半39分には木村がダメ押し弾を決めて山形に下剋上を果たした。チームの悲願であるJ1初昇格がかかる決勝はベガルタ仙台(6位)と対戦する。

自分を欲しがってくれなかったクラブ

前半31分に試合が動いた。左サイドで岩渕が浮き球パスを前線へ送ると、パスを収めたFW一美和成がペナルティエリア右側へボールを流すと、フリーで抜け出した本山が右足を振り抜いてネットを揺らした。

「まさかこんな舞台で点が取れると思っていませんでした。一美選手からいいパスがきて、トラップした瞬間にゴールへの道が見えたから振り抜くだけでした」と笑顔が弾けた。

この日は右ウィングバックで先発し、笛が鳴り終えるまで右サイドを駆け抜けた。守れば相手の出鼻をくじく激しいプレスで防ぎ、攻めれば決勝点を挙げる殊勲の活躍を披露した。

木山隆之(たかし)監督から『どのポジションもできる』と太鼓判を押されるマルチロールは、昨季J1優勝、今季天皇杯を制覇したヴィッセル神戸のアカデミーで育った。ただ競争が激しい常勝軍団へのトップチーム昇格は難しく、神戸U-18卒団後は関西の名門である関西学院大に進学した。

関西学院大では主力として定着し、優れた守備力、複数ポジションをこなせる戦術理解能力の高さで関西大学サッカー屈指のDFへと成長した。だが大学在籍中に意中の古巣からオファーは届かず、大学卒業後は兵庫県の隣県である岡山県を拠点とするファジアーノ岡山へ入団した。

神戸と岡山は川崎製鉄水島サッカー部を源流とするクラブであり、兄弟クラブとして見られることもある。因果というべきか、神戸アカデミーで育った本山は現在岡山のユーティリティプレイヤーとしてチームを支える存在となった。

J1昇格POを優勝すれば、自身を育てたクラブと来季J1で対戦できる。神戸との対決もモチベーションにして攻守に奮闘してきた。

ゴール後にサポーターに向けて拳を突き上げる本山(左)

「(神戸との対戦は)とても大きなモチベーション。自分を育ててくれたクラブでもありますし、逆に自分を欲しがってくれなかったクラブ。自分にオファーをくれなかったクラブでもあるので、感謝の気持ちもすごく強くありますけど、悔しさもあります。もしそういう舞台で対戦することができれば、大きなモチベーションを持って臨めると思います」と古巣への想いを吐露した。

憧れだったクラブが立つ舞台にたどり着くまで残り1試合となった。決勝(7日午後1時5分、岡山・シティライトスタジアム)で対戦する仙台を打ち破り、来季成長した姿を神戸に見せる。