明治安田J1リーグで昨季16位に低迷した名古屋グランパス。

J2降格の危機と直面した以上に深刻だったのが、不明瞭なプレースタイル…。これを打破するために招聘されたのが、2006年の初来日以降、Jリーグで通算20年目の指揮を執るミハイロ・ペトロヴィッチ監督だ。

“ミシャ式”と称される独自の哲学を反映させた攻撃サッカーは早くもチームに浸透。明治安田J1百年構想リーグの地域リーグラウンドWESTでは第14節終了時点で暫定2位と躍進するチームの中で、下部組織出身の若手がブレイクの兆しを見せている。

約2年半に及んだ武者修行から復帰した22歳のMF甲田英將。2021年には高校在学中ながらパリ五輪出場を狙うU-22日本代表にも飛び招集された逸材ドリブラーは、強い覚悟を胸に新境地を切り開いている。

取材・文/新垣博之(取材日:2026年4月22日)

「グランパスの試合を初めて観に行ったのは幼稚園の時で、アカデミーに入ってからもよくアカデミー生同士で観に行っていました。当時は玉田さん(圭司、現トップチームコーチ)や、今はチームメイトでもある(永井)謙佑くん、(和泉)竜司くんのプレーをよく観ていたので、今年グランパスに帰って来た頃に玉田さんから指導を受けるのは少し緊張していたというか、不思議な気持ちでしたね(笑)。

2年半で得意料理できたかな…あっ、僕は三重県の四日市市出身なので、四日市名物のトンテキ(※ウスターソースなどを使って作った黒いソースが特徴な豚肉のステーキ)をよく作って食べています!」

画像: WBで新境地を切り開く名古屋MF甲田英將。(写真提供:名古屋グランパス)

WBで新境地を切り開く名古屋MF甲田英將。(写真提供:名古屋グランパス)

「時間」と「スペース」が提供される名古屋のWB

今季開幕当初の甲田はシャドーとウイングバック(WB)で併用され、出場機会も少なかったが、第7節からは5試合連続で先発に抜擢。定着したのは〔3-4-2-1〕の右WBだった。経験はあったものの、自身初の本格的なコンバートとなった。

そんな中、3月22日に行われた百年構想リーグの地域リーグラウンドWEST第8節、敵地での京都サンガ戦の前半19分、プロ5年目を迎えた甲田はJ1カテゴリーでの初ゴールを決める。その流れには早くも浸透し始めた“ミシャ式”による新生グランパスのサッカーが表現されており、甲田の個性あってこそ生まれたゴールでもあった。

「ミシャさんのサッカーにおいてのWBはすごく攻撃的に感じています。逆サイドで展開が進んでいる時もサイドチェンジが飛んでくるので、常に大外に張って“幅”をとっています。スペースが広いので、自分のようなドリブルを武器にする選手にとっては仕掛けやすいポジションだと感じてプレーしています」

この初ゴールの場面、右ワイドの高い位置に張った甲田がボールを受けるまでに、3バック中央の藤井陽也が相手のプレスを外して自らボールを持ち上がり、森島司を経由し、右センターバックの野上結貴は相手DFを引き付け、甲田へパスを捌くと同時にインサイドを駆け上がっていく。

守備の要を担う選手たちがリスクを冒すことで、ボールと共に「時間」と「スペース」も得た甲田は得意のドリブルで内側へ悠然とカットイン。「クロスとシュートが半々の割合で蹴った」と話すように、複数の側面からゴールの可能性が高いプレーを選択してゴールが生まれていた。

スタッツに表れる守備意識の高さ、ドリブラーの変化

新生グランパスはボール保持時に〔3-4-2-1〕のWBとシャドーを前線に加えた5トップ気味の超攻撃的な布陣を採用している。甲田が担うWBのポジションには守備時に5バックを形成する際、サイドバックとしての守備能力や運動量も求められる。

実際に守備面や走力面での甲田の各スタッツはチームで2番目か3番目相当に多い。第12節終了時点でのプレータイムが501分間(6試合未満)とは思えない数値に相当な覚悟を感じさせる。

「シーズンが始まる前の段階では自分がスタメンに入るのはかなり厳しいと考えていました。その中で試合に出るためには球際やセカンドボールへの意識は強くなりますし、そういう局面で勝つことはJ2での経験が生きていると思います。

特に相手が3バックの時はマンツーマンで自分がマッチアップする相手選手がハッキリするので、その1対1で負けているようでは話にならないですし、自分が試合に出る意味がないと思います。攻撃の面で勝つのはもちろんですが、守備面でも自分がスイッチになる気持ちでやっています」

画像: 「名古屋MF甲田英將 スタッツに見る変化と成長(第12節終了時)」筆者作成(参照:Jリーグ公式)

「名古屋MF甲田英將 スタッツに見る変化と成長(第12節終了時)」筆者作成(参照:Jリーグ公式)

アタッカーとしてもドリブルやクロスがチームで2位の数値を記録しながらも、そこには変化がある。スルーパスなど鋭いパスが多くなり、左右両足から繰り出す豊富な種類のクロスにも工夫を加えている。

「常にゴールから逆算したドリブルやパス、シュートを考えています。今のポジションだとクロスが多くなるんですけど、縦に突破して相手が戻りきる前にGKとDFの間に鋭く入れる低く速いクロスや、点で合わせられるピンポイントなクロス、ふわっと浮かせるクロスなど、中で合わせる選手とコミュニケーションをとりながら工夫して取り組んでいます」

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