日本陸連の主張や論理には他にも怪しい点があります。

最も不可解なのは、「新国立競技場では全国高校総体(インターハイ)もできない」という点の強調です。新国立ではサブトラックの設置予定が立たないので、現時点では全国レベルの競技会ができない第2種競技場の公認しか出せないそうです。現在の移行期間を経て、2017年からは全天候舗装型の400mトラック併設が第1種公認の必須条件になるので、2019年完成の新国立はダメという論法です。

実際、下に挙げた産経新聞の記事の後で、実際に日本陸連の幹部が長文のインタビューに応じ、「利用団体の代表」としてこの趣旨の意見を述べています。

MSN産経ニュース 2013年10月18日付「新国立競技場、五輪できてもインターハイさえ開催困難な情勢」
http://sankei.jp.msn.com/sports/news/131018/oth131...

しかし、インターハイはそもそも国立でやっていません。<表2>は、インターハイの各競技開催が主会場県を中心とした地域ブロック制に移行した2004年度からの大会一覧と、陸上競技会場の一覧です。ソースは日本語版ウィキペディアですが、この情報が正しい事はリンク先の全国高等学校体育連盟(高体連)公式サイト等で確認済みです。国立開催が可能だったブロックや主会場県(東京開催)の部分は色付けしてみました。

<表2> 2004-2014年度のインターハイ、及び同陸上競技会場


出典:日本語版ウィキペディア内各項目、 公益財団法人全国高等学校体育連盟公式サイト
注:会場の名称は当時のもの。

このように、インターハイの会場はずっと持ち回りで開かれています。過去の国立開催は2度、1959年度(第12回、「全国高等学校陸上競技対校選手権大会」)と1975年度(第28回)しかありません。そして来年度の2014年度は39年ぶりに東京都が主会場ですが、陸上競技はヴァンフォーレ甲府の本拠地でもある山梨中銀スタジアムで行われます。現国立は既に解体工事が始まる予定ですが、同じ都内で5万人収容の味の素スタジアム(味スタ)も8月1日の総合開会式でしか使いません。つまり、インターハイの陸上は1万7千人の山梨中銀で妥当というのが高体連の判断です。より巨大な新国立での開催はもっと非現実的でしょう。

この事実からも、「新国立競技場ではインターハイができない」とした日本陸連のコメントは実情を隠し、世論を自らの過大な権益へと誘導させようとするものであると言わざるを得ません。

日本陸連が同じく理由に挙げた「全日本中学校陸上選手権大会」(全中陸上)も、各県の持ち回り開催です。1979年度の第6回大会まではずっと国立開催でしたが、その後は1983年度の第10回大会のみです。こちらも「新国立が出来たらずっと開催」とはならないでしょう。

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