インカレ開催での「サブトラック」

一方、大学陸上界の頂点を決める「天皇賜盃 日本学生陸上競技対校選手権大会」(インカレ陸上)は、確かに原則として国立で開催されています。その主催者である日本学生陸上競技連合(日本学連)の公式サイトで、<表2>と同じ2004年度からの大会会場を調べたのが<表3>です。これも分かりやすいよう、国立開催の時を赤地にしてみました。なお、来年の2014年度大会の開催地はまだ発表されていません。例年通りの9月開催だと国立開催は不可能ですが、かつては6月開催だったので、どうなるでしょうか。

<表3> 2004-2014年度のインカレ陸上開催会場


出典: 公益財団法人日本学生陸上競技連合公式サイト
注:男子は2009年第78回大会まで天皇賜杯、2010年第79回からは天皇賜盃。
女子は秩父宮妃賜杯。
会場の名称は当時のもの。

2011年は恐らく震災の影響で、ロアッソ熊本の本拠地でもあるKKWING(現うまかな・よかなスタジアム)でしたが、それ以外は一貫して国立開催です。

ただし、芝生への影響が大きいハンマー投げは、予選のみは国立を使いません。そこで出てきたのが「日本大学陸上競技場」と「代々木公園陸上競技場」。前者は東京・世田谷区の桜上水にある日本大学文理学部のキャンパス内にあり、国立からは西に約10km、車で約20分。一方、後者は渋谷区にある代々木公園の中にあり、国立からは2.5km、車で5分程度です。ここは400mトラックが8レーン整備され、ナイター練習用の照明もあります。

種明かしをすれば、現在の国立はこの代々木公園陸上競技場、通称「織田フィールド」を組み込む事で、自身には補助競技場がないという欠落を補い、第1種競技場の公認を得ていました。

もう一つ、国立での陸上競技で欠かせない施設があります。道路を隔てた反対側に槇文彦が東京体育館を設計した事は10月のコラムで触れましたが、ここには建物の南側に陸上競技場があります。1周200mで5レーンしかない小規模施設ですが、歩道橋を渡れば国立競技場のスタンド下練習トラックから徒歩5分、整備状態も良いので、投てき競技以外の練習には十分です。さらに、東京体育館の敷地は新国立競技場計画の中に含まれないので、新スタジアムが出来てもそのまま利用可能です。実際、ハディドのプレゼン映像でも、リチャードソン(コックス)のバース画像でも、東京体育館とその陸上競技場はそのままの形で残っています。

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