実際MLSではむしろ守備組織の緩さを指摘される事が多いほど攻撃的なスタイルを採用しているクラブは多い。しかしご存知の通りその戦術は優秀な外国人助っ人に支えられており、それでもなおCONCACAFチャンピオンズリーグでは試合巧者のメキシコ勢に歯が立たないのが現状で、クリンスマンの目指すサッカーへの人材不足は明らかだった。

そこで彼は欧州での経験値が高いデンプシー、ブラッドリーを軸にしつつ、海外でプレーする才能豊かなアメリカ系、特に母国ドイツの選手に目を付ける。大国アメリカは日本だけでなく世界中に自国の軍隊を駐留させているが、最もその人数が多いのがドイツで、以前代表に帰化し今大会のメンバーにも選出されているジャーメイン・ジョーンズも軍人とのハーフであった。彼らを積極的に代表へ招き入れることでクリンスマンは改革を推し進めて行く。

当初は上手く機能せず、3次予選でグアテマラに負ければ敗退という瀬戸際にまで追い込まれたが、昨年6月に行われたドイツ戦での勝利をキッカケに、ゴールドカップを無敗で制するなど12連勝を記録し最終予選も2試合を残してワールドカップ出場を決定。最終戦では悲願のワールドカップ初出場を目前にしたパナマから非情にもロスタイムにその夢を奪い、宿敵メキシコを助ける余裕を持っての首位通過であった。その好調のなかでかつてのレギュラー、ダマルカス・ビーズリーを左サイドバックとして再生させ、また、ゴールドカップ以降はドノヴァンを復帰させたが、これまでアメリカを支えてきたボカネグラ、オニェウらは外れていった。