フェイエ時代、対峙する相手を次々にぶち抜く宮市を見て、誰もが「ついに日本にも個人で勝負できる選手が現れた」と心を躍らせた。しかし、この3年の度重なる怪我とコンディション低下により、永井謙佑(現名古屋)と比較され、世界屈指とも言われたスピードには陰りがみられ、あれほど得意としていたドリブルで全く抜けなくなっていたのである。

加えて、プレーの幅の狭さも深刻であった。元々身体能力に依存したタイプだが、技術そのものはアーセナルで鍛錬を積んだだけあってしっかりしており、トゥウェンテでもコーナーキックのキッカーを任されるなど両足からの正確なキックには現在でも定評がある。

しかし、実直すぎる性格で視野もやや狭く、あまりに素直すぎるプレーにより相手選手にいとも簡単に読まれてしまっているのである。フェイエ時代もその単調なプレーは課題とされたが、当時は10代の若手として許された。しかし21歳になった現在でもバリエーションの少なさはほとんど改善されていないのだ。また、コンディションにもかなり影響されるタイプのようで、実戦離れが響いて加入当初は僅か30分ほどでバテてしまい、ここまで全ての試合において60分ほどで交代させられてしまっている。

アルフレト・スフリューデル監督の計らいにより多くのプレー機会を与えられているが、その度に結果を残せず、今月初めには解説者のハリー・ファン・デル・ラーン氏に「あまりにも酷い宮市が先発で起用されているのは商業的な理由以外に考えられない」と辛辣な言葉を浴びせられた。その真相は定かではないが、出来が酷いのは事実であり、3年前の宮市を記憶していたサポーターからも今やブーイングが飛び交う状況だ。周囲の反応に焦って失敗を繰り返し自信を失う悪循環に陥るなか、ライバルのモフタルが着実に結果を残している。宮市はとうとう前節はベンチのまま出番を与えられなかった。

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