注目の新監督から見て取れる「柔軟性」

今季の浦和レッズは、2021年からの2シーズンを託したリカルド・ロドリゲス氏に代わり、新たにポーランド人のマチェイ・スコルジャ監督を招聘した。ポーランドリーグを4度制覇した新監督がどのようなコンセプト、戦術を植え付けるか注目が集まった。

「浦和レッズで私が変えたいと思っているポイントの一つに、ハイプレスを増やしたい、というところがあります。ボールを失ったらできるだけ早く取り返す、できれば相手のペナルティーエリアの近くで取り返す、ということをしたいと思います」

スコルジャ監督が今年1月に行われた就任会見で語ったのは、「ハイプレスの重要性」だった。まずは明確なコンセプトを掲げて、方向性を示したのである。

この就任会見から3か月半が経過し、開幕からリーグ戦9試合を戦った現時点で言えるのは、決してハイプレスに固執していないということだ。相手チームがビルドアップを徹底する場合は、興梠慎三と小泉佳穂を中心に高い位置から積極的な連動したプレスでボールを奪いに行き、ボール保持者の選択肢を狭める形を取る。相手にロングボールを蹴らせて、センターバックのショルツとホイブラーテンが跳ね返すのも狙いだ。

だが実際の試合では、ハイプレスを仕掛けられる局面は限られる。体力的な面からも、90分を通したハイプレスは現実的ではない。高い位置からのプレスが有効的ではない場合は、ミドルサードまたはディフェンシブサードにコンパクトなブロックを形成して守る。浦和に限らず他のクラブでもそうだが、状況に応じて守り方を変える。すなわち、柔軟性を持たせるということである。

この柔軟性は自チームのビルドアップでも発揮される。ショルツとホイブラーテンがペナルティーエリアの幅いっぱいに広がり、両名の間に西川周作または岩尾憲が入り、丁寧にボールを回しながら組み立てていく。時にトップ下の小泉がボランチの位置まで降りてくるが、この形にこだわる訳ではない。西川とホイブラーテンの正確なフィードで一気に前線へボールを送り、スピードアップした崩しも見せる。

ビルドアップに関しては、前任のリカルド体制で培ったエッセンスも活用しながら、ロングフィードも交えて打開していく。ここにも指揮官の「柔軟性」が見て取れるのだ。