しかし、セットプレーおよびロングスローというストロングポイントが存分に発揮されているとは言い難い。それは、指揮官が採用するコンセプトと密接な関係がある。

昨年7月より指揮を執るファビオ・カリーレ監督は、個の力を引き出しつつ、サイドアタックを軸としたチーム作りを推し進めてきた。そのブラジル人指揮官が徹底させているのが、最終ラインからのビルドアップだ。

両センターバックを中心にボールをつなぐ形がメインで、3バックに可変して左サイドバックの米田隼也が中に絞る動きやボランチの鍬先祐弥が最終ラインに落ちる形も見られるが、ビルドアップの質は決して高いとは言えない。各人が足元にボールをつけるだけになってしまっており、相手の守備ブロックの外でパスを回すのみに終始している。

また、パス回しのテンポが基本的に変わらず一定のため、相手からすると守備の予測が立てやすくなっている。事実、第18節・ジュビロ磐田戦のとりわけ前半には、相手のハイプレスによる圧力もあって自陣でボールロストしてしまう場面が散見された。76分の失点シーンは、ディフェンダーとゴールキーパーの連係ミス(難しい局面だったが、GKへ下げる際にゴールエリア前方を外してリスクを減らせれば防げたかもしれない)によるものであり、悔やまれる形だった。

自陣でのボールロストをできる限り無くし、自分たちのペースで試合を運ぶためにはどうすればいいのか。この方策については、次のセクションで考察していきたい。