多重国籍選手の質の向上と依存脱却

これまでアジア各国は多種多様な強化施策を代表チームにほどこしてきた。その中でも即効性を期待できる施策は多重国籍者の補強だ。この施策は例えばA国にルーツがある(親にA国人の血が流れているなど)選手が欧米などで育ち、欧米のプロリーグでプレーしている選手を招集する施策だ。

この施策の利点は複数ある。自国の情勢が不安定であっても情勢が安定していてサッカーのインフラ(練習環境、優れた指導者)が整っている国で育成を受けた選手を加えることができるため、資金力が乏しいナショナルチームでも即戦力を容易に補強することができる。

またルーツがある選手はFIFA主催大会、大陸連盟主催大会に出場していなければ招集が可能であるため、生まれ育った欧米の代表に親善試合で招集されていてもくら替えが可能だ。

この施策をいち早く取り入れたフィリピンは2019年に同国史上初となるアジア杯出場を決めた。今大会も元スウェーデン代表DFアイハム・ウスウがシリアにくら替えし、優れた守備能力でオーストラリア、ウズベキスタンの強力なアタッカーを抑え込んだ。

インド戦に出場したアイハム・ウスウ(左)

またインドネシアはプレミアリーグ52試合、ラ・リーガ123試合出場のジョルディ・アマトが加わるなど、これまで新興国に加わってきた多重国籍選手の質が劇的に向上している。理由としてはワールド杯アジア出場国枠の増加(4.5→8.5枠)、発展途上国の経済発展による魅力、高いモチベーションなど多岐に渡るという。

ただ強力な多重国籍選手が増え始めた一方で、マンチェスターユナイテッドのアカデミー出身でイングランド生まれのイラク代表MFジダン・イクバルがイラクの危険な選手と国内複数媒体で報道されていたが、日本戦に出場しなかった。強力な欧米育ちの選手がいなくても列強に対抗する力を身に付けつつある。

多重国籍選手の質の向上と同時に、国内サッカーのインフラ環境の整備・改善や育成年代の指導強化も同時進行で行っているため、多重国籍選手に依存しないよう各国はしっかり草の根から強化している。そのため多重国籍選手であっても既存の国内選手との競争に勝てるとは限らないので、多重国籍選手の質も年々向上していると推察できる。