USA
|
1
|
0-1
1-0 0-1 |
2
|
Ghana
|
---|
ドノヴァン(PK) |
62' |
得点者
|
6' 93' |
K・ボーテング A・ギャン |
---|
FIFA.com 選定 | Qoly.jp 選定 | |
A・アユー(ガーナ) | A・ギャン(ガーナ) |
ボブ・ブラッドリーとライェヴァッツ、二人の知将同士の戦いは、まさに戦術と戦術のぶつかり合いとなった。
前半の支配者となったのはライェヴァッツ率いるガーナ。相手の2ボランチに対して、K・アサモアー+K・ボーテンク+アナンのトライアングルをぶつけて数的優位を作る。これで1つ下がった位置のアナンがフリーとなり、彼を中心に中央やや右よりでボールをキープし相手を引きつける。そして空いた左のスペースに開いたA・アユーが入り込み、そこにパスを通して仕掛けていく。また守備でも中央の数的有利を生かしてブラッドリー、クラークにプレスをかけて奪い、カウンターを狙う。これで試合の先手を取った。
この戦術が機能したガーナは、狙い通りの形の攻めを何度も繰り出した。そして開始からわずか5分でクラークからボールを奪い、ショートカウンターで先制点を決めた。
しかし、もちろんボブ・ブラッドリー率いるアメリカも黙っていなかった。前半途中からクラークをエドゥに入れ替え、ボランチを縦の関係に。そして低い位置のエドゥがボールを供給することでビルドアップの問題を修正。さらに後半は2トップの1角のフィンドリーを下げ、フェイルハーバーを投入。これで並びは先日のアルジェリア戦と同じ形となった。
だが、戦術は先日とは違った。前線は3トップに近い形だが、1番左のアルティドアが一番前で、中のデンプシー、右のドノヴァンと右斜め下に下がっていく位置関係であった。これはアルティドアが左で裏を狙うことによりラインを押し下げてボランチとの間にスペースを作らせた上で、そこの右サイド寄りのアナンの周りにドノヴァンとデンプシー2人を配置し局面で数的優位を作成。これにより飛躍的にバイタルエリアにボールが入る回数が増加した。さらにガーナが「逆サイドに出来るスペースを狙ってくる」と読み、左サイドバックのボーンスティーンに攻撃参加を控えさせ、守備に専念させたのだ。フェイルハーバーはボーンスティーンの守備を助けると共に、攻撃時にはアナンの近くに絞るようなポジション取りで囮となった。ブラッドリーもやや高い位置を取り、バイタルエリアに頻繁に入り込む。この戦術で先手を奪い取り、ガーナに「アユーを右サイドに移したが効かずに元に戻す」「K・ボーテンクをボランチに近い位置に下げさせる」などの対応を余儀なくさせた。
そして、62分、狙った右サイドのコンビネーションからアメリカが同点に追いつくことに成功する。ドノヴァンからの短い前向きのパスを受けたデンプシーが、そのままのスピードで突破を仕掛け、ジョナサン・メンサーのファウルを誘ってペナルティキックを獲得。それをドノヴァンが決めて試合を振り出しに戻した。
このように激しい戦術のぶつかり合いが繰り広げられた内容であったが、結末に向かって徐々に尻すぼみになっていく。お互いに運動量が落ちたことにより戦術の約束事が全うできなくなったのである。特にかなり「無理をした」戦術であったアメリカの崩壊は顕著であった。
そして結末はまったく戦術のやり合いとはかけ離れたものから生まれた。延長前半の93分、ハーフウェーよりも後方からA・アユーが苦し紛れに前線に放り込むと、A・ギャンが裏に飛び出し、そのままゴール。試合を決定付けた。