前編(https://qoly.jp/index.php/special/184-special/7473-think-about-the-blunder-of-manu-vol1)では長々と複合的な理由を述べてきたが、端的に言えば内容結果共に「実力不足」であると言わざるを得ない。世代交代に伴いう移行期であるということを差し引いても物足りなさが残る。

【求められる絶対的キャプテン】

原因はいくつかあるが、絶対的なキャプテンの不在をあげておきたい。どうも今シーズンはふわふわした内容の試合が目立つのだ。ギャリー・ネヴィルが引退をし、ヴィディッチも怪我が相次いている。ピッチの中や外に、取りまとめるものがいないため、チームのベクトルがバラバラな状態がしばしば見受けられる。選手個人は申し分なくても、11人でやる競技である以上、これは非常に大きな問題である。あの気性激しいアイリッシュが懐かしいのは私だけであろうか。

【チームスタッフに対する不安】

もちろん、選手だけの責任ではない。スタッフ陣にも大いなる疑問が突き付けられるだろう。サー・アレックスだけではなく、問題はアシスタントの方だ。そもそもサー・アレックスに関して言えば、典型的なモチベーターであり、決して戦術家として名を馳せているわけではない。戦術的、守備的なところはアシスタント・マネージャーに依存する部分が多く、カルロス・ケイロス以降のマイク・フェランの手腕には疑問を抱かざるをえない。ロナウドという飛び道具があった時代にはそれを活かすための策が講じられてきた。今のチームはルーニーに依存するという戦い方を2009年~2010年で失敗し、ルーニーのみには依存しないながらも、実質的にはルーニーのチームである。しかし、クレヴァリー離脱後、それもままならなくなり、鉄壁の守備を見せた数シーズン前はどこにいったか、流れで守るだけのチームになってしまった。DF陣全体の加齢もあるが、規律がはっきり見えてこないのだ。

【迷えるルーニー】

選手というものは、周りを「活かす」タイプの選手と、周りから「活かされる」選手タイプに分かれる、と私は考えている。今のユナイテッドは「活かす」タイプの選手が明らかにいないのだ。もちろん世界中探したって数えるほどしかいないのはわかっていることなのだが、世界を代表するクラブには常に抱えていなければならないと考える。今のユナイテッドにはその役割をこなせるものはかろうじてキャリックくらいで、ルーニーにその役割が与えられているようにも見えるが、彼は周りを活かすときもあればそうでない時もあるし、試合中にはどちらかに偏ってしまうことがほとんどだ。才能はありながらも、器用にこなすことができずに非常に調子にも左右されてしまう。彼がこれを乗り越えて、状況に応じて使い分けることができたら、世界一の選手になる日は近いはずであるが、今のところ気分屋な彼のそんな姿は夢と酒の席にしか出てこない。

客席に座っている小柄な赤毛が、背番号18を背負ってピッチに現れたらならば、と今シーズン既に数えきれないほど考えたものだ。世界中のマンチェスター・ユナイテッドを愛する人達もそう思ったことだろう。

【ELは敗退するべき?】

話は逸れたが、こういった選手がいない以上、戦術的な所でカバーして欲しいのだが、相次ぐ怪我人に加え、戦術的な部分がはっきりとピッチやベンチから見えてこないのだ。

スカウティングは「ちゃんとしているのか」と疑問に思うほどである。完全な憶測でしか無いのだが、カルロス・ケイロスはラテン系でありマイク・フェランは英国籍である。文化が違えばはっきりと意見を言うことができたのかもしれないが、同じ文化でましてや相手はサーを持ち、自身の現役時代の監督でもある大偉人である。ベンチワークにおいても、あまり動いている仕草が見えず、常にサー・アレックスの横でおしゃべりをしているようにしか見えない。私はもちろんユナイテッドの関係者ではないし、番記者でもないが、彼には役不足ではないかとカルロス・ケイロス退団以降、常に疑問に思ってきた。今、ユナイテッドに一番必要なのは、中盤の選手ではなく優れた参謀なのかもしれない。

さて、以前敗退した2005/06シーズンといえば、敗退した後の冬のマーケットでエヴラとヴィディッチがやってきたシーズンでもある。加入後は慣れるまでに苦しんだものの、以降3シーズンの輝かしい連覇の中心であったことは言うまでもない。ヴィディッチの大怪我に加え、エヴラにもかなりの衰えが見える今シーズン、冬には動かないと言っているサー・アレックスではあるが、どのようになるのか。幾つかの名前は上がっているが、果たしていくつが実現するのだろうか。チャンピオンズリーグ敗退で、2000万ポンドが飛んだと噂される。ELではアヤックスと対戦することが決まったが、うるさい隣人を考えるとプレミアのタイトルだけは死守したいと考える。そのために捨てるといったわけではないが、ELを取りに行くのか、というのが率直な印象である、もちろん敗退して欲しいわけではないが、今の選手層からいっても、「二兎追うものは一兎をも得ず」となるのは2009/10シーズンに痛いほど学んだ。まして、アヤックスとの試合を前に、リーグでは重要な試合がいくつも待っている。こういったネガティブな考えは私のダメなところでもあるのだが、現実問題そうも言ってられない。シティにその力は備わっていることは認めなければならないが、プレミアのタイトルを奪われて、5月末から1年間ビールが不味くなるのは、どのユナイテッドファンも避けたいのだ。

クレヴァリーの復帰で、開幕の勢いが取り戻せればこれ以上うれしいクリスマスプレゼントはない。大晦日にも試合があるユナイテッドだが、サー・アレックスが70歳を迎えるこの日をいい形で終えられるだろうか。年明けにはいつものユナイテッドが見たいものである。

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 db7
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