今現在、どこのクラブも運営は経営と所有と現場の仕事にほぼ分離されている。
アーセン・ベンゲルにも共通して言えるが、サー・アレックスは経営権を握っているとは言わないまでも発言権は非常に大きく、“マネージャー“という言葉が語るフィールドはピッチ上だけに留まらない。その上結果を出し続けるのだからクビにする必要はどこにもない。優勝できなければ不振が囁かれるものの、3位以内はキープし翌年立て直す。言うことはないだろう。
短期のマネージメントと中長期のマネージメントではやることが違う。偉大なる名将の眼は、短期のみの利益と結果のみならず、偉大なるクラブを更に偉大にするという視点から逆算されたものであった。
クラブの栄光輝く未来の為なら平気で既存をぶっ壊す。これができる人はなかなかいない。クラブに忠誠を誓わないような行動を起こす選手には問答無用で突き放す。それが大スターであろうと若手であろうとだ。スタムだろうとベッカムだろうとロイ・キーンだろうと関係ない。逆に必要と有らば選手を徹底して守りサポートする。平気で審判にも噛み付けばメディアにも容赦はない。もちろん全てにおいてサー・アレックスが間違っていなかったというわけではない。ただ結果的にはタイトル獲得で周りを黙らせるわけだ。
また、1つのスタイルに囚われない。
戦術的に優れているとは言いがたいが、時代に合わせてアップデートを繰り返えす姿勢は保っていた。そしてサイクルを理解していた。彼がユナイテッドを率いた間、どれだけのスクラップ・アンド・ビルドを繰り返したことか。選手の入れ替えはともかく、戦術的なものも含めて、過去の栄光にすがる気はあまりないらしい。新たな栄光の為に引きずることはしない。新しい血を外から入れることで活性化させる。古い血は吐き出すか再生させる。そのサイクルにおいて最低限の成績は残しつつサイクルのピークが訪れれば、トロフィーを必ず掲げてきた。