その試合、スペインではお馴染みの光景が描かれてしまう。なんと、判定に納得のいかないバリオ・アトランティコのコーチと審判が、あろうことかピッチの上で口論してしまうのである。
こういったシーンは、スペインでは頻繁に見られるものだと言われている。少年サッカーの舞台でも、大人たちは激しくヒートアップし、時には選手の保護者が監督と口論になることもあるそうだ。情熱の国、スペイン――。それほどまでに、この国のサッカーへの熱量は凄まじいのである。
しかし、この事態を良しとしなかった勇敢な男がピッチにはいた。
FELICITACIÓN especial para Alejandro, nuestro héroe, Premio Jarque Puerta al gesto deportivo
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— InfoEmergencias (@InfoEmerg)
2013, 12月 2
アレハンドロくんである。
繰り返しになるが、彼は当時5歳。自分よりもはるかに大きい大人の小競り合いに彼は割り込み、仲裁に入った。さぞかし怖かったことだろう。彼の拳は震えていたかもしれない。それでも、アレハンドロくんは立ち向かった。この勇気をフェアプレーと称さず、一体何と呼ぶのだろう。
スペイン紙『MARCA』はこの事実を大きく伝え、この写真は数々の人の心を揺さぶった。そして昨日、『MARCA』主催のセレモニーにアレハンドロくんも出席。特別賞を獲得し、今回大きな話題となったわけだ。
「僕はただ、しなきゃいけないことをしただけだよ」
セレモニー終了後、アレハンドロくんは語っている。また、彼の父親は「アレハンドロは大人たちに口論をしてほしくなかったんだ。ただ単に、サッカーをプレーしたかっただけさ」と話し、「息子には『正しいことをしたね』と伝えたよ」とコメントしている。
少年の心は純粋である。
アレハンドロくんを突き動かしたのは、由々しき倫理感ではなく、サッカーに対するシンプルな愛情だった。そしてその愛は、ついに2人の大人に立ち向かうという恐怖心にも競り勝った。愛が持つ力の大きさを、5歳の少年に見てとった。