◎まずは守って!

今度は、GLの得点や失点から勝敗を分析しましょう。

まずは得点からです。

<図5>GLで得点差があった場合の決勝Tでの勝敗結果と勝ち点の多いチームの勝率
(左側:得点が多いチームの勝利数、右側:少ないチームの勝利数)

<図6>GLで得点差があった場合の1回戦での勝敗結果と勝ち点の多いチームの勝率
(左側:得点が多いチームの勝利数、右側:少ないチームの勝利数)

GLで得点が多かったチームから見た成績は、<図5>でまとめた決勝T全体では34勝19敗で勝率64%、<図6>の1回戦のみでは19勝9敗で68%でした。4点差以上があるとそれぞれ12勝3敗、7勝1敗と8割以上の勝率になりますが、逆に3点差以内の場合はどれも勝率6割前後。有利は間違いないものの、決定的な要因にはならないことが分かります。

ところが、失点になると話が変わります。こちらは失点数が少ない方が強いはずなので、決勝T全体を熱かった<図7>と1回戦のみの<図8>では、他の図とは色を変えました。

<図7>GLで失点差があった場合の決勝Tでの勝敗結果と勝ち点の多いチームの勝率
(左側:失点が多いチームの勝利数、右側:少ないチームの勝利数)

<図8>GLで失点差があった場合の1回戦での勝敗結果と勝ち点の多いチームの勝率
(左側:失点が多いチームの勝利数、右側:少ないチームの勝利数)

得点差が4点なら、失点差の規準は3点。これ以上失点差が多いチームは、決勝T全体では2勝8敗、1回戦だけでも2勝6敗と苦戦。覆したのは2002年、得失点差が-1で勝ち上がったアメリカがメキシコを制したのと、2006年にGLを無失点で終えたスイスをウクライナが破った試合だけです。これが失点差2だと6勝10敗で勝率38%、1では10勝12敗で45%と、かなりチャンスが増えてきます。

ところが<図8>のように、1回戦に限定すると様相は一変します。1点差でも2点差でも2勝7敗、勝率は22%しかありません。合計4試合のうち3試合は2002年に集中し、残りは2010年にもう一度2点差の不利を跳ね返したスペイン。ただ、今回はこのスロースターターがGLで消えてしまいました。チリに勝っていれば、オランダ戦の1-5からの逆襲は十分有り得たのですが……。

言い換えれば、準々決勝以上だとむしろ1点(8勝5敗)や2点(4勝3敗)ぐらい失点数が多かった方が勝っているので、本当に「1回戦だけは守備力勝負」です。GLの場合、特に初戦の入り方が重要と言われますが、決勝Tでも同じで、そこでは攻撃より計算しやすい守備がベースになるのかもしれません。

2014年の決勝T、1回戦の8試合では失点数が同じだったチームの対戦はありません。そして、GLで1位より2位の方が失点しなかったカードが1つだけあります。完封勝利無しで合計3失点だったオランダに、クロアチア戦での1失点に抑えたメキシコが挑む試合。

こんな理由で、

「決勝Tの1回戦、波乱が起こる可能性はブラジル-チリと、オランダ-メキシコ」

と、私は予想します。もちろん1位通過の両チームが有利なのは確かですし、特にホームの熱狂的な声援を受けるセレソンは絶対的な優勝候補の大本命に違いありませんが、チリとメキシコは歴史的番狂わせを起こすだけの力を秘めていると、過去のデータは示唆しています。

とりあえず、前編はここまで。後編では、準決勝進出、そして優勝まで届くチームの条件をGLの成績から推理します。

【後編】そして優勝は混沌と……


筆者名:駒場野/中西 正紀

プロフィール: サッカーデータベースサイト「RSSSF」の日本人メンバー。Jリーグ発足時・パソコン通信時代からのサッカーファン。FIFA.comでは日本国内開催のW杯予選で試合速報を担当中。他に歴史・鉄道・政治などで執筆を続け、「ピッチの外側」にも視野を広げる。思う事は「資料室でもサッカーは楽しめる」。
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