この試合、ブラジルのキャプテンであるチアゴ・シウヴァは64分に警告を受け、累積警告により次の準決勝に進出することができなくなった。彼らが次に戦うのは、近年国際トーナメントで目覚ましい結果を残すドイツだ。圧倒的な声援が予想されるブラジルとしてもそう容易い相手ではなく、主将でありながらDFラインの大黒柱であるチアゴ・シウヴァの欠場はチーム全体に大きな不安を与えた。

しかし、そこでダヴィド・ルイスは考えたはずなのだ。「このチームをまとめるのはオレだ」と。

というのも、ブラジル代表は今大会における第1から第4までのキャプテンの序列を発表している。これによると、チアゴ・シウヴァ、ダヴィド・ルイス、ジュリオ・セーザル、フレッヂ。つまり、ダヴィド・ルイスは副キャプテンであり、次の準決勝でキャプテンマークを巻く可能性が限りなく高かったのである。

この事実に、ダヴィド・ルイスが気付いていないわけがない。チアゴ・シウヴァがサスペンションを受けて以降、それまでとは違ったメンタリティが彼に宿ったのではないだろうか。少なくとも、チアゴ・シウヴァがイエローカードを受けた際、フェリペ・スコラーリ監督はあからさまに苦い表情を見せその顔に手をやった。リードしている状況であったためスタジアムが静まることはなかったが、見ている全てのブラジルサポーターが、心のどこかに嫌な感じを覚えただろう。

このロジックに論理性はない。選手に直接話を聞いてみないと分からなければ、選手が本心を語るかどうかも怪しい。完全に憶測の世界だ。

しかし、ハメス・ロドリゲスを必死に諭すダヴィド・ルイスの顔には、ブラジル代表という偉大なチームのキャプテンであるべき凛々しさがあった。そこには、普段私たちがよく見るムードメーカーとしての彼はいなかった。左腕にキャプテンマークこそ巻かれていなかったが、心の中にはキャプテンとしての自覚に溢れていたのではないだろうか。重みは人を変える―。かつて、日本代表のキャプテン長谷部誠も似たことを話していた。

セレソンのキャプテンとは、おそらくそれほどまでに彼らの誇りなのだろう。我々の想像が及ばない世界である。そして次節、これまでドゥンガやカフー、ルシオといった偉大なリーダーたちが担ったその使命は、この男に託されることになった。

人は今のブラジルを「絶体絶命」と表現する。しかし、このたくましい新リーダーがチームを牽引する限り、諦めることなどないだろう。

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