今大会だけでなく、W杯史に残る試合として記憶されることになった、ブラジル対ドイツの準決勝。ドイツ代表による記録的なゴールラッシュとなったこの試合、次から次へと生まれたゴールの中でも最も“記録的”となったのが、ミロスラフ・クローゼが決めた2点目である。
最後は自らのシュートのこぼれ球を流し込み、セットプレーで先制したチームを楽にさせる追加点をもたらしたクローゼ。W杯直前にゲルト・ミュラーのドイツ歴代最多得点記録を更新していた36歳のストライカーが、W杯通算ゴール数をついに16とし、あのロナウドを抜いて単独のW杯歴代最多得点者となった瞬間であった。
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— DFB-Team (@DFB_Team)
2014, 7月 8
「記録を狙うため、優先的に起用されている」といった声も一部で耳にするが、フィールドでの彼のアクションを注視していれば、質が伴っていることは明らかだ。攻守におけるハードワークをこなしつつ、常にゴールをイメージした点取り屋らしい狡猾な動きを見せている。
ただ、日本人にとっては特に日韓W杯当時のヘディングの印象があまりに強いこともあり、クローゼのプレースタイルというか特徴が分かりづらい面があるかもしれない。
そこで、歴史に名を残すストライカーとなったクローゼの強みを探るべく、あえてデビュー間もない頃の彼のプレーを見てみたい。
クローゼは父親の助言により、大工の資格を取ってからプロ契約を結んでおり、冒頭のシーンはそれ。以降はデビューを飾ったカイザースラウテルン時代(2000-2004)の彼のゴール集である。
この当時の彼は、まさに点取り屋。特に、日韓W杯直前の2001-02シーズンはリーグ戦31試合に出場、16ゴールを決めた。
そしてプレーを見ていて感じるのは、彼の“目の良さ”。視線の配り方などを見るにクローゼは周辺視野で状況を把握する能力に長けており、それが動き出しの速さや駆け引きの巧みさ、味方を使う上手さ、さらに代名詞と言えるヘディングでの決定力にも繋がっているのではないかと思われる。
所属のラツィオで2012年に決めたこのスーパーゴールなども、優れた状況判断力の賜物だろう。
ブレイクした日韓W杯以降、所属のカイザースラウテルンでは一時スランプにも陥ったが、2004年に移籍したブレーメンでトーマス・シャーフ監督の指導を受け、状況把握能力を生かして味方のためにも働ける総合力の高いFWへと成長。クラブで苦しい立場のときも代表では味方を活かすとともにゴールという結果を残し続け、ゲルト・ミュラー、さらにはロナウドという歴代最高のストライカーたちの記録を塗り替えたのである。
2012-13シーズンのラツィオでのゴール集。決めるための準備の段階にも注目。