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そして、カタルーニャ州の独立には意外にも日本のアニメキャラクターが強く関係している。それが、『クレヨンしんちゃん』である。

説明するまでもないが、『クレヨンしんちゃん』は故・臼井儀人さん原作の大人気漫画のキャラクターであり、わんぱくかつ悪戯好きの少年『野原しんのすけ』の日常を描いたコメディ作品で、TVアニメや映画などを中心に展開されている。日本で育った少年少女であれば、1度くらいは『野原みさえ』の「グリグリ攻撃」や『アクション仮面』の「アクションビーム」を見たことがあるだろう。

実はこの『クレヨンしんちゃん』、スペインでも“超”がつくほどの人気作品なのだ。

特にカタルーニャ州では導入も早く、バルセロナのスポンサーも務める地元TV局『TV3』が2001年から放送を開始。バスク語、カタルーニャ語、ガリシア語、そしてスペイン語と4ヶ国語で放送されていたこともあり、60%ほどの視聴率を獲得しナショナルダービーとして知られるエル・クラシコのそれを上回ったという伝説すらある。

カタルーニャ州でも大人気のそんな『しんちゃん』だが、独立の意思を表すマスコット的な存在になっているらしい。

こちらはカタルーニャ州の独立を主張する(と思われる)人物が投稿した写真である。写真には『しんちゃん』がカタルーニャ州の州旗を掲げた写真が掲載されているが、実はこれ、この人物のTwitterのプロフィール写真なのだ。

このように、カタルーニャ州では『しんちゃん』にカタルーニャ州旗を掲げさせた写真が確認されている。「独立の象徴」と言ってしまうと大げさだが、独立の意を表すアイコンやマスコットのようなものだろうか。

『クレヨンしんちゃん』がカタルーニャの人々にここまで受け入れられているのには歴史的背景が大きく関係している。フランシスコ・フランコの独裁政権時代、スペインでは地方言語の使用が制限されるなど、カタルーニャを中心とした区画は弾圧されてきた過去を持つ。エル・クラシコが激しさを伴うのは、こうした背景も関係している。

そうした中で地方テレビ局は自社で番組を制作するパワーが乏しく、結果的に日本が制作したアニメを買い付けた。そこに地方語であるカタルーニャ語を吹き替えたのだが、これがカタルーニャの地域ナショナリズムを刺激し、現地語へ回帰するムードを沸き立てたんだという。カタルーニャの人々にとって、『クレヨンしんちゃん』はそうした感覚を思い出させた起爆剤となったのだ。

余談だが、『しんちゃん』とカターニャ州旗セニェーラはその色合いも似ている。偶然にしてはできすぎである。

原作者である故・臼井儀人さんはスペインを訪れた際、自らの作品が予想以上に愛されていることにひどく感激したそうだ。そして今、その人気は別のムーブメントへと発火し、独立を目指す一つのメッセージとして掲げられている。日本で生活しているとなかなか関心の持ちづらいこの社会問題だが、日本に住むサッカーファンであればその距離感がちょっとだけ縮まった気がする人もいることだろう。

さらなる自由と高度な自治を求め、カタルーニャ州の挑戦は次なるステップに移る。FCバルセロナ、そしてクレヨンしんちゃんを契機に、今後もその動向に注目してみたい。

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