まずは、カタルーニャ州を代表するサッカークラブ、FCバルセロナである。サッカーファンでこのクラブを知らないという人はまずいない。世界から最も認知されたクラブの一つであり、 スポーツクラブとしては史上初めてソーシャルメディアで1億人のファンを獲得した

そんなFCバルセロナとカタルーニャ州の結びつきを語る上で最も分かりやすいのが、そのエンブレムやユニフォーム、キャプテンマークのデザインだろう。

FCバルセロナのエンブレムの右上に記されている赤と黄色のストライプは、カタルーニャ州の州旗に描かれている“セニェーラ”という模様であり、カタルーニャ州の象徴とも言うべき柄である。また、FCバルセロナのユニフォームにもどこかにこの模様が施されており、カタルーニャ州への帰属を主張している。ちなみに、 今シーズンのリーガ・エスパニョーラ第3節アスレティック・ビルバオ戦ではこのセニェーラ柄が全面にあしらわれたユニフォームを着用することがLFPから認められ話題となった

実はこのFCバルセロナ、カタルーニャ州の独立に関してクラブが全面的に支持すると発表している。

こちらは今年10月にFCバルセロナが発表したもので、11月に予定されていた独立に関する住民投票をクラブがサポートすると誓ったもの。これはなかなか画期的なことである。なぜなら、仮にカタルーニャ州が独立に成功すれば、FCバルセロナはリーガ・エスパニョーラから除外される可能性があったためだ。

LFPのハビエル・テバス会長は「もしカタルーニャが独立すれば、FCバルセロナとエスパニョールはスペインのリーグでプレーすることは出来ない」と『MARCA』の中で語っており、それは十分考えうることであった。スペインリーグから除外された場合、FCバルセロナはフランス1部のリーグアンを戦うのではないかという報道もあったが、対戦相手のレベルによる実戦機会の担保や入場料収入を考えれば懸念の方が遥かに大きい。そうしたリスクを承知していながら、クラブ側は住民投票に関する協定を結んだのだ。

結局この住民投票は政府の介入により実現しない見通しとなったが、それでも今後、このFCバルセロナという存在がカタルーニャ自治州の独立に関して何かしらの使命を担うことは間違いないだろう。

カタルーニャ州という自治体は、このFCバルセロナによって広く認知されている。そして、カタルーニャ州がスペインからの独立を目指していることも、FCバルセロナを媒介して世界中へと認知され始めている。私は以前、エル・クラシコの試合前に、カンプ・ノウで「Catalunya is not Spain!(カタルーニャはスペインではない!)」という壮大なコレオグラフィーが描かれたのを見た記憶がある。カンプ・ノウという世界最大規模の「箱」では独立を目指すコンサートも行われており、人々が一致団結するための装置がこの区画にはあるのだ。

いわば、FCバルセロナがメディアのような機能を担っており、この小さな区画の独立の意義はFCバルセロナという「拡声器」によって世界へ主張される。これほど強力なパートナーを、自治体が放っておくはずがないのだ。

バルセロナといえば、下部組織上がりの選手を世界で最も擁することでも知られている。そのため地元に縁のある持つ選手が多く、実際にDFジェラール・ピケもカタルーニャ州の独立に肯定的であるという。

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