日本のウインガーを生む土壌。育成面からの考察。

フットボールには相手がいること。これこそが、恐らく一流のドリブラーを育て上げる上で忘れてはならない部分だ。ドリブルは自分だけで成り立つものではなく、相手との駆け引きの中で使える武器であることを知り、日々修練の中で磨き上げることこそが、ドリブラーを1つ上の段階へと押し上げる。

「とにかく小学生の時期に、ドリブル練習をすることです。あとは、関節の使い方がポイント。そのために練習中は、常にスピードを求めます。ゆっくりでいいよということは一切ない。ただスピードを上げたい、心肺機能を強化したいという理由ではなく、体重移動の感覚や関節の可動域を広げるためです。」
http://jr-soccer.jp/2014/02/19/post19552/3/

これはJ-Chibaの代表として育成に関わる川島和彦氏の言葉だが、日本の育成面も「どのようにドリブルをするか」を重要視している。

また、乾選手を生み出したセゾンFCの土川晶夫コーチも下のようにコメントしている。

「あくまでサッカーはパスゲーム。パスを生かすためのドリブルを選手にはやってもらっています。ドリブルして、自分のコートから相手コートの端まで行ける選手なんていませんし、ドリブルだけでは試合に勝てません。ドリブルは試合の中での武器のひとつ。パスを生かすためにドリブルを武器として使うのです。普通にパスを出したり、遠くに出したりするのは他のチームでもやる子はたくさんいます。でも、このドリブルでボールを奪われないように相手の裏に行く方法をやっているのは他にいないから武器になるのです」
http://www.sakaiku.jp/column/technique/2013/005136.html

このように、「何のためにドリブルをするか」、「どのようにドリブルをするか」という部分では勿論様々な育成組織が、今回取り上げた日本人プレイヤー達と同じく明確な答えを用意しているが、「対面する相手との駆け引き」について深く考えさせているような育成組織はそこまで多くはなさそうだ。そして、筆者はその部分こそが、本物のドリブラーを作り上げるために必要な部分なのではないかという仮説を提唱したい。そして「相手との駆け引き」を考え、自ら試行錯誤していく事こそが、フットボーラーとして進化する上で彼らを助けるものだろう。

ラヒーム・スターリングやエデン・アザールは「技術の言語化」が上手く、常にフットボールに対して真摯に取り組み、考え続けていることを感じさせる。ラヒーム・スターリングは若干20歳。紹介した日本人ドリブラーの誰よりも若いが、彼のインタビューにおけるコメントの数々は非常に洗練されている。

「常に考え続けることが出来ること」。これこそが、今後のフットボーラーに求められてくる資質なのではないだろうか。筆者は「相手との駆け引き」を重視し、そのポテンシャルを試合の中で十分に生かし切れるだけの頭脳を持ったドリブラーが現れた時、日本代表のドリブラー不足、ウインガー不足は終わったと言えるのではないかと期待している。

それは今回挙げた選手達の中から現れるのかもしれない。そして、育成組織がそういった選手を作り出せるようになった時、日本代表は――。そんな夢を見ながら、今回は筆を置くこととしよう。


筆者名:結城 康平

プロフィール:「フットボールの試合を色んな角度から切り取って、様々な形にして組み合わせながら1つの作品にしていくことを目指す。形にこだわらず、わかりやすく、最後まで読んでもらえるような、見てない試合を是非再放送で見たいって思っていただけるような文章が書けるように日々研鑽中」
ツイッター:@yuukikouhei

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