礼記に登場する「四霊」― 麒麟・霊亀・応竜・鳳凰。それを筆者は、個人的にフットボーラーのイメージに当てはめてみた。残念ながら霊亀だけは当てはまらなかったのだが。
非常に優しい性格であると伝えられる神聖な麒麟は、バルセロナのリオネル・メッシだろうか。大人しい性格と見た目から繰り出される美しい超絶技巧。芸術のようなドリブルは神秘的で、不思議な儚さを感じることがある。嵐を起こすことが出来ると伝えられる応竜はレアル・マドリードのクリスティアーノ・ロナウド。鍛え上げた身体を駆り、瞬発力で相手を切り裂き、破壊的なシュートでゴールを揺らす男は、「竜」の称号に相応しい。
そして、鳳凰。風をつかさどる瑞獣とされた五色の美しい鳥へと、ある選手が化けようとしている。エデン・アザール。若きベルギー代表のドリブラーは、指揮官ジョゼ・モウリーニョとの出会いを経て、今季大きく羽ばたいている。
では、何が彼を急速に世界の頂点に近い場所へと押し上げているのか。今回は、エデン・アザールの進化によって考えていくことで「チームの戦術におけるドリブラー」というものについて考察していこう。
題材となるのはマンチェスター・ユナイテッド対チェルシー。ドラマチックなファン・ペルシーのゴールで、同点となったゲームだ。
まずは、オフ・ザ・ボールでの動きが明らかに向上していることが挙げられる。例えばこの場面、ウィリアンのサポートを確認するとラファエルを引き連れて一気にエリア内へ。この動き出しによって、ウィリアンが余裕を持って受けるスペースが生まれている。
こういった、3人目まで把握した動きが出来るようになったことは今までとの大きな違いだ。フィリペ・ルイスも非常にサポートの上手い選手故に、こういった目に見えにくい工夫によって何度となく違いを作った。
前半22分、ドリブルを仕掛ける場面だ。ここでは真っ直ぐにCBに挑んでいく手もあるのだが、中に切れ込みながらブリントを引き付ける方を選択。フェライニの戻りが遅く、右で待っている選手がいたことから確実性の高い方向へのドリブルを仕掛け、結果的にフェライニが戻ってきたので安全なパス。
ここで解るのは、状況を把握しながらのドリブルに磨きがかかっていることだ。