1. 「オーストリア史上最強」の評価

FCレッドブル・ザルツブルクは、オーストリア王者に8度輝いた同国の名門チームである。

あの世界的飲料メーカー『レッドブル』が2005年にクラブを買収し、以来クラブの名称に『レッドブル』の名前がつくようになった。

オーストリアで最も優勝経験があるのはラピド・ウィーンで32回。また、オーストリア・ウィーンも24度のリーグ制覇を経験しているように、ザルツブルクはオーストリアで最も優勝した回数の多いチームではない。

しかし、優勝の経験はいずれも1990年代以降のことであり、近年急速に力をつけてきたチームだと言える。

そんなザルツブルクがオーストリアサッカー史上に残る結果を残したのが、2013-14シーズンだった。

オーストリアの1部リーグ、オーストリアン・ブンデスリーガは全部で10チームである。リーグ戦は4回の総当たり戦、全36試合で行われるのだが、このシーズンの総得点はなんと110得点。これは1試合平均3.05得点をたたき出した計算になる。

8試合を残しリーグ優勝を達成し、UEFAヨーロッパリーグのRound of 32ではあのアヤックス相手に2戦合計6-1の圧勝を収める。敵地アムステルダム・アレーナでも3-0と完封する快挙だった。チームは結局、ベスト16でバーゼルに敗れたもののその衝撃はヨーロッパ全土に広がった。

そうした功績とパフォーマンスから、「オーストリア史上最強」との評価を受けることもあるザルツブルク。では、一体どんなスタイルでその名声を手に入れたのであろうか。

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