GK 櫛引 政敏(鹿島アントラーズ)

今大会、最も「驚き」を与えたという点では彼が一番であろう。

清水エスパルスに在籍していた2013年、櫛引は日本代表経験を持つ林彰洋(現鳥栖)からポジションを奪い、五輪出場を目指す代表チームでも正GKに抜擢される。

しかし昨年途中に清水でレギュラーを失うと、代表でもユース年代からエリートコースを歩んできた”柏ユースの最高傑作”、中村航輔がレンタル先のアビスパ福岡でセンセーショナルな活躍を見せたことで、ファンの間では中村を推す声が高まっていた。

櫛引か中村か――守護神がどちらになるのかは今大会の注目の1つであったが、残念な形で勝負は決する。中村が直前の負傷により離脱することになったのだ。

こうして守護神として大会を迎えた櫛引だが、実戦から遠ざかっていることもあってかその表情はどこか頼りなさげでプレーもやや不安定であった。しかし、試合を重ねるごとに反応は鋭さを増し、負ければ即敗退が決まる準々決勝イラン戦で好セーブを連発し勝利を呼び込むと、決勝の韓国戦でも逆転に繋がる活躍を見せたのだ。

大会序盤には不安そうに見えた櫛引はいつしか、頼もしさすら感じさせる“好漢”となっていた。

今年は鹿島に期限付き移籍することが決まっており、大ベテラン曽ヶ端準に挑むことになる。代表でも本大会まで中村らとのポジション争いは続くだろう。だが、アジアの頂点に立ったことで自信を付けた櫛引が守護神争いで一歩リードしていることは間違いない。

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