ビルドアップの極意、Jリーグ30周年MVP遠藤保仁の存在

ただ、徳島戦の決勝点(2-3の敗戦)は自分たちのビルドアップを徳島の連動したプレスでハメられ、高い戦術眼をもつ柿谷にボールを奪われて喫した失点だった。

「バックパスから始まって、ポジショニングも含めて後ろ向きの選択が続いたことで招いた失点だと捉えています。チーム全員がもっと速くポジションをとって、相手を見ながらボールを動かす、ということをもっとやっていかないといけません。あの失点はすごく痛かったですけど、すぐにチームの課題として共有できました。そういう意味では今後へ活かせる失点だったと思います」

自陣深くからボールを繋ぐビルドアップからの失点はU-22日本代表にとっても避けては通れない課題だが、そこは彼の強みでもある。球足の速い縦パスで攻撃の起点となり、ドリブルでの持ち運びは相手のプレッシャーラインを越えるだけでなく、フルスプリントで突破にかかる場面も多い。

DFながらドリブルでの持ち運びや鋭い縦パスも武器とする。写真は第13節の東京V戦(写真提供:ジュビロ磐田)

「自分のところから攻撃を始める、仕掛ける気持ちでいます。自分に強い矢印のプレスが来るということは、ピッチのどこかでチームメイトがフリーになっている証拠です。そこでビビッて蹴ってしまうと、チームとしても何も残りません。確かにリスクはありますが、怖さは感じません。前にスペースがあればドリブルでの持ち運びもします。フルスプリントでドリブルすると、どうしても視野が狭くなってしまうので、最近は少しゆっくり目で運んでいます。そこは反省気味ですね(笑)」

ジュビロには『Jリーグ30周年MVP』に輝いた元日本代表MF遠藤保仁が在籍。Jリーグと日本代表で共に最多出場記録をもつ43歳のレジェンドは、ボランチが本職。ビルドアップの引き出しも豊富だ。パリ五輪を目指す20歳のDFにとって、“ヤットさん”の存在とは?

「ボールタッチもキックも正確なのですが、それ以上に立ち位置やパスを出したあとの次の動きがとても速くて的確です。後ろから見ていても深く考えながらプレーされているのが分かります。ビルドアップをするうえではヤットさんにボールを預ける、あるいはヤットさんのポジショニングやマークの付かれ方を見て、自分が高い位置をとったりもします。ヤットさんをフリーにするためにも、自分たちのポジショニングやパススピードが重要になってきます。そういう部分はヤットさんと直接コミュニケーションを取りながら、勉強させてもらっています」