指揮官の情熱が反映されたスタイル
2008シーズン以来となるJ1の舞台を目指して戦う東京ヴェルディ。今季の戦いぶりを語るうえで欠かせないのが、就任2年目の城福浩監督である。
城福監督はこれまで、年代別の日本代表、FC東京(計2回)、ヴァンフォーレ甲府、サンフレッチェ広島で監督を務めてきた。勝利後は渾身のガッツポーズで喜びを表現し、納得がいかない判定には険しい表情で抗議。喜怒哀楽にあふれた“熱血漢”である。
その指揮官が標榜するのが、攻守にアグレッシブなスタイルだ。攻撃では、最終ラインから丁寧にパスをつなぎ、常にボールを動かして相手守備陣のギャップを狙う。守備では、前線からの能動的なプレスを基本的な約束事としつつ、コンパクトな陣形を保って相手アタッカーの侵入に制限をかける。
まるで指揮官の情熱がピッチ上に反映されたような戦い方である。
特に攻撃時のポゼッションは、スカッドとの相性が良い。現チームには、惚れ惚れするボールさばきでリズムをつくる司令塔の森田晃樹を筆頭に、綱島悠斗や深澤大輝、平智広、谷口栄斗らテクニックに定評があるアカデミーの出身者が多く、丁寧にパスをつなぐスタイルは打ってつけだ。
彼らアカデミー育ちの選手たちに加えて、齋藤功佑や北島祐二、宮原和也といった足元のスキルおよび戦術理解度が高いプレーヤーを外部から補強することで、基本コンセプトの浸透度をさらに高めている点も特徴的だろう。
なかでも、サイドバックの深澤と宮原の動きは非常に興味深い。左SBの深澤は技巧派の北島とコンビを組む形が多いが、周りを上手く活用できる背番号20がパートナーの場合は、インナーラップまたは相手ペナルティーエリア内へ積極的に侵入する動きを繰り返し、相手守備陣の脅威となる。
第23節・ロアッソ熊本戦では、得意とする形から齋藤の先制点をアシストした。(動画15秒から)
一方、左サイドのパートナーが積極的なドリブルを武器とする甲田英將または新井悠太の場合、彼らが相手ディフェンダーと1対1を仕掛けられるように、絶妙な距離感を保ってサポートする。
この動きは右SBの宮原が得意としているが、右サイドはドリブルに加えて連係でも崩せる中原輝が今夏に加入。これまで以上にオーバーラップの回数を増やしている宮原の働きが、サイドアタックの破壊力アップにつながる。
状況に応じたサイドバックの振る舞いからも読み取れるように、城福監督は選手たちの特長、強みに主軸を置いたチームづくりを心掛けている。戦術コンセプトとスカッドが見事に嚙み合った結果、上位争いに絡むことができているのだ。