今の清水に必要だった“人情家”

今シーズン開幕前の清水エスパルスは、圧倒的な陣容からJ2優勝の最有力候補として挙げられていた。

しかし、開幕から7戦勝ちなし(5分2敗)と大いに苦しみ、クラブは4月3日にゼ・リカルド監督の契約解除を発表。後を受けたのが、コーチから昇格した秋葉忠宏氏だ。

第7節終了時点で19位という苦境を救うには、秋葉監督はうってつけの存在だった。

とにかく熱い人物として知られ、2020シーズンから率いた水戸ホーリーホック時代には、試合後のインタビューで「何もない、最低、最悪のゲームでした」「ただただ自分たちから負けるようなプレーをしただけだと思います」と厳しい言葉で総括する姿が注目を集めたこともある。

その一方で、活躍した選手を称え、後押ししたサポーター(ファミリー)に感謝の気持ちを伝えるなど義理人情に厚い。時に涙を流して言葉を紡ぎ、時に名文句の「This is football !!!」(主に会心の出来だった際に見られる)で感情を爆発させる。

2点のビハインドをひっくり返した第31節・町田ゼルビア戦後にも渾身の「This is football !!!」を披露しており、8月25日にはクラブ公式グッズとして秋葉監督監修のもとTシャツとフェイスタオルの販売が発表されたほどだ。

厳しい言葉で締めるところはしっかりと締める一方、活躍した選手および力をくれるサポーターを称えることも忘れない。心配りにあふれた“人情家”こそ、今の清水に必要だったのである。

その秋葉監督は、最終ラインからボールをつないで相手守備陣を動かしつつ、打開力に優れたアタッカーたちに自由を与えて個の力を巧みに引き出している。

また、4-2-3-1を基本システムとしながらも、戦況に応じて試合途中から3バックを採用するなど柔軟性もある。この点については、後ほど詳しく述べたい。