戦術面に加えて感心させられるのは、マネジメントの上手さ。2チーム分の戦力を抱える中、選手を入れ替えながら起用することで疲労軽減はもちろん、各人のモチベーション維持を実現。いわゆる「宝の持ち腐れ」を防ぎ、健全な競争でチーム力を向上させている。

そして見逃せないのが、乾貴士と権田修一という必要不可欠なふたりのベテランを指揮官がコントロールしている点だ。言わずもがな両名とも実績は抜群で、今なおJ1クラブでも主力としてプレーできるレベルにある。

乾と権田は個性が強い一面があり、その情熱が裏目に出てしまうことも過去にはあった。

だが、1年でのJ1復帰を目指すチームにおいて、永遠のサッカー小僧である乾は新境地のトップ下で攻撃の中心として、欧州移籍の想いをいったん封印した権田は好セーブと精度の高いキックで活躍を続けている。

特に今季リーグ戦で8ゴール・6アシストを記録している乾は、(得意とする)守備のスイッチを入れる役割もこなすなど奮闘。現チームの“攻守の軸”と呼ぶにふさわしい。

後半開始から3バックを採用する意図は?

前述した通り、秋葉忠宏監督は柔軟性のある采配が特長だ。とりわけ第27節の栃木SC戦以降は、後半開始から3バック(3-4-2-1)に切り替える形を継続して採用。第32節のブラウブリッツ秋田戦では後半途中から3-4-2-1を用いた。

上図は3バック時の基本布陣である。ここでキーマンとなるのが、守備のマルチロールである原輝綺だ。4バックでは右サイドバックを務める背番号70が、右ストッパーにスライドすることで、選手交代を行うことなく3バックを採用できている。

では、なぜ後半開始から3バックで戦っているのか。栃木戦後にキャプテンの鈴木義宜は以下のように明かした。

「チームとしてのやり方で、後半の入りの失点が多いというところで、3枚にして、その10分をまずしのぐというプランがあった。後半の頭から『3』にして、10分過ぎたらベンチから「10分過ぎた」という合図で4枚に戻すというのもプランの中にあった。結果として、10分はしのげているし、やりたかったことはできた」