鈴木が語ったように、「後半の入りの失点が多い」という点は確かに課題となっていた。事実、後半開始から5分以内にゴールを許すケースが栃木戦の前に相次いでいたのだ。まとめると以下になる。

・第19節 vs モンテディオ山形 ⇒ 48分に失点
・第21節 vs ブラウブリッツ秋田 ⇒ 49分に失点
・第25節 vs 大分トリニータ ⇒ 50分に失点
・第26節 vs ジェフユナイテッド千葉 ⇒ 47分に失点

その対策として、栃木戦は後半開始から3-4-2-1にシフト。入りの10分を無失点でしのぎ、鈴木の言葉通り54分頃には再び4-2-3-1へ。最終的には中盤を逆三角形にした3-5-2で戦い1-1のドロー決着となった。

後ろが4枚の場合でも、3枚(実質5枚)の場合でも、ハーフタイムに指揮官が選手に声を掛けて、後半の入りを集中するように促すはずであるし、選手もより集中して戦うだろう。ただ、仮に4バックのまま後半に臨めば、意識は変わってもシステムは変わっていないので、物理的に失点を防げる可能性はさほど高まらない。

対戦相手も「清水は後半の入りに失点が多いので、ゴールへ向かう形を増やして得点を奪おう」という指示を監督ないしコーチから言われているはずで、狙い目だと捉えるに違いない。相手が勢いを持って向かってくることで、状況はさらに難しくなる。

よって、3バック(実質5バック)にすることで、物理的に最終ラインの枚数を増やし、メンタル面だけではどうしようもできない失点を防げるように努める。このように考えると、「後半の入りの失点が多い」という課題に対し、後半開始から3バックに変更するというのは理に適っていると言えよう。

続く第28節のファジアーノ岡山戦でも後半開始から3-4-2-1で戦い、試合終了までこの布陣を貫いて1 – 0で勝利すると、第29節の東京ヴェルディ戦および第30節のレノファ山口戦でも同様に戦って3試合連続でウノゼロ勝利を達成。課題を見事に克服してみせた。

秋葉監督は攻撃的なスタイルを理想としており、水戸ホーリーホック時代もその傾向が見られた。しかし、フィジカルが重視され、ロングボールやロングスローを用いるチームが多いタフなJ2を勝ち抜くためには、失点を減らすことがやはり重要となる。

圧倒的なタレント力がそのまま勝利に結びつく訳ではないのがJ2というリーグであり、その難しさを十分に理解している(水戸時代は“持たざる者”として立ち向かう側だった)からこそ、3バックを採用してリアリストに徹していると言えるのだ。