2024パリオリンピック男子サッカー。準々決勝でスペインに敗退し、1968年メキシコシティ大会以来のメダルとはならなかった日本代表。

東京大会に続いて2大会連続で敗れた相手スペインに、オリンピックの舞台で勝ったことも覚えているサポーターは多いだろう。

2012年ロンドン大会で、グラスゴーの衝撃と呼ばれた試合を振り返ってみたい。

無敵艦隊スペイン

当時のスペイン代表といえば、EURO2008、2010W杯、EURO2012を連覇し、まさに無敵艦隊の名を欲しいままにしていた世界最強チームだ。

オリンピック代表はU-23とはいえ、そのメンバーはA代表のジョルディ・アルバ、次世代の天才イスコ、コケ、アスピリクエタ、GKダビド・デ・ヘアなど、既に世界トップレベルで活躍する選手が揃っていた。

さらにオーバーエイジとしてフアン・マタ、ハビ・マルティネス、アドリアン・ロペスを加え、圧倒的な金メダル候補。

グループリーグ第1戦となった日本代表戦では、無敵艦隊の順調な船出を世界中が確信していたはずだ。

ロンドンのU-23日本代表メンバー

ロンドン五輪に挑んだ関塚隆監督率いるU-23日本代表の主力は、当時のザックジャパンで新スターとなっていた清武弘嗣。

後にA代表でも活躍する山口蛍、酒井宏樹、酒井高徳、権田修一、永井謙佑、宇佐美貴史などがおり、オーバーエイジ枠には吉田麻也と徳永悠平が入った。

当時ドルトムントで大活躍していた香川真司の招集は叶わず、予選で活躍した大迫勇也は杉本健勇とのポジション争いに敗れて本大会メンバーからは落選している。

香川を招集できなかったショックが大きく報道され、日本国内でも決して期待値の高いチームでは無かった。

世界を驚かせた永井謙佑

世界最高のパスワークを駆使し、相手を翻弄してゲームを支配するスペイン代表に対し、関塚ジャパンが取った戦略は怒涛のハイプレスだ。

前線の大津、永井、東らがスペインに対して激しいプレッシャーを継続し、相手がほころびた一瞬のチャンスに賭ける。

選手たちは関塚監督の狙い通りにスペインのパスワークを抑え込み、前半34分に大津が決めた1点を守りきって大金星を挙げた。

グラスゴーの衝撃として世界中に報じられたこの勝利で、特に注目を浴びたのがFWの永井謙佑だった。

衝撃的なスピードで何度もカウンターチャンスを創出するだけでなく、ボールを保持する相手を猟犬のように追い回してプレッシャーをかける。

日本が90分間スペインを抑え込めたのは、永井らのハードワークのおかげと言っても過言ではないだろう。

滅私奉公でチームのために走った永井には、試合後のドーピング検査で3時間も拘束されたというエピソードが残っている。

抜き打ちドーピング検査で選手は尿を提出しなければならないが、90分間走りきって体中の水分が出尽くしていた永井は、いくら水を飲んでも全く尿が出なかったそうだ。

世界を驚かせた歴史的大金星は、文字通り全てを出し切った選手たちの献身によってもたらされたのだ。

世間の反応は?

サッカーの母国イギリスの大観衆の目の前で、無敵艦隊スペインを日本が撃沈した試合は世界に衝撃を与えた。

AFP通信は「日本が五輪サッカー史に残る番狂わせ」、CNNは「スペインにとっては五輪の歴史に残る黒星」と報道。

1996年のアトランタ大会で、日本がブラジルを破った「マイアミの奇跡」になぞらえる声も多数あった。

この勝利によって一気に注目度を高めた日本代表は、グループリーグを突破して準々決勝のエジプト戦も勝利し、結果的には4位というU-23制となって最高の成績を納めた。

スペイン戦で衝撃的な活躍を見せた永井謙佑は、その後ベルギーのスタンダール・リエージュに移籍し、A代表にも選出されている。

勝負はやってみなければわからない。まさにそんなサッカーの魅力を存分に見せつけてくれた試合は、日本人サポーターの記憶に深く刻まれているだろう。

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