QolyアンバサダーNobuya Akazawa によるサッカーコラムをお届けします。

ボローニャを率いてチャンピオンズリーグに導いた若き名将はイタリアの雄ユベントスの監督に就任。ここまで2節を戦ったチアゴ・モッタ監督率いるユベントスは圧巻の内容で3−0の2連勝。そんなユベントスのホームに乗り込むのがデ・ロッシ監督率いるローマ。昨季途中から就任したローマのレジェンドは確かな手腕を示して、見事に今季もローマを率いるための権利を手にしました。しかし開幕してからの2戦は1分1敗。いまいちスイッチが入らずに停滞した試合内容になっています。

しかしです。この2チームが繰り広げる一戦は確実に面白く、熱を帯びた一戦となります。では今回はセリエA第3節ユベントス×ローマの試合のポイントについてプレビューしていこうと思います!最後まで一読頂けると嬉しいです!

予想スタメンと対戦戦績

直接対決 37試合 ユベントス 20勝 ローマ9勝 8分

ユベントスは前節のメンバーと同様のメンバーで試合に臨むと思います。全ての局面においてかなりスムーズに試合を運べていたので、大きくメンバーを変える必要はなさそうです。一方のローマ。開幕戦が4231、2節が4321と形を変えながら試合に入りましたが、どちらも苦しんでいます。しかしながら2節の後半から3421にしてからはかなり前進の局面でスムーズになりました。さらにショムロドフ投入による352も機能しており、その流れをそのまま踏襲すると思われます。

では試合のポイントについて考えていきましょう。

ボールを持ちたい両者。テーマは『自由人』

ボールを持ちながら試合を進めていきたい両チーム。そして攻撃の局面におけるテーマの1つとして、『誰をどこで自由にするか』がお互いにあります。ユベントスだとカンビアーゾやユルディス、ローマだとディバラがそれを享受することが多くなっています。しかしその自由は組織の中で生み出される自由で、決して混乱を引き起こすようなものではないのがお互いにすごいなと感じます。ではお互いにどのような前進を考えているのか、まずはこちらについて触れていこうと思います。

・ユベントスの前進経路

まずユベントスの前進経路についてです。前節のヴェローナ戦を題材に考えていきます。

以下の図をご覧ください。


ユベントスは右SBのサヴォーナが大外を取ることがほとんどです。彼が大外の住人となることで、内側にカンビアーゾを押し込みます。これを行うことによってカンビアーゾが自由を得ることができるのですが、整合性を保っているのがCHのファジョーリとロカテッリです。ではどのようにバランスを保っているのでしょうか。

以下の図をご覧になってください。

まず1つ目にファジョーリが降りる場所です。サヴォーナを押し出すためにSBの場所に降りることがあります。この際、左SBのカバルは相手のプレス隊の人数によって幅を作るのか、それとも3CB化するのかを選択しています。これによって、1stプレス隊の足を止めて安全に前進しながら、中央のスペースを使っていきます。

次に2つ目が以下のようになります。

このように1stプレス隊の手前にCHが降りることでプレスの基準をずらすことが多くなっていきます。これを行なった際に、大外のSBがボールを引き取れることが可能になっていきます。このCHとCBのやり取りで時間を作り出すことで、サヴォーナを安全に押し出すこと、カンビアーゾのリンクプレーを促すこと、さらにボールサイドのユニット形成の時間を稼ぐことに繋がっています。

最後に3つ目がこちらです。

3−2の土台を作りながら大外にユルディスが流れるパターンです。これも相手のプレス隊の人数を見ながら土台を作り出すので、サヴォーナが大外を取ることが可能になり、カンビアーゾを中央のエリアでプレーさせることができています。これによってユルディスを起点に、攻撃を組み立てていくパターンも見受けられました。

まとめるとユベントスの前進のポイントとして挙げられるのは以下のものになります。

・プレス隊の人数の把握

・サヴォーナを押し出すタイミング

・カンビアーゾの解放

・CHの降りる場所。しかしCBの間に降りることは皆無

・カバルの4バックと3バックの行き来

・ユルディスが左ハーフスペースの住人

このポイントを押さえながら、ユベントスはスペースを共有し、それぞれの時間を貯金していきます。スペースを作っているからこそ、各々の距離が長くても安全にパスを通して前進していくことができているのだと思います。

・ローマの前進経路

ではローマの前進経路についても触れていきます。ローマも同様に自由にする人を決めながら、前進を行なっていくチームです。先にも触れたようにその選手がディバラとなります。ではどのようにそれを作り出すのか、こちらも前節のエンポリ戦を題材に考えていきます。

では以下の図をご覧下さい。

まず最も行われるのが3バック化です。開幕戦、第2節と共に、もっというと昨季から4321もしくは4123で可変を行うことがローマはほとんどでした。そして今季もそれを継続しています。その際にアンへリーニョが3CB化することで、CHもしくはIHの選手が1stプレスラインの基準をずらしていきます。これでマンチーニの持ち出しを促していくことが多いのがローマで、このためにSBが高い位置を取ってスペースを創出します。そしてこれによってディバラが中央でプレーすることが可能になっていきます。

次にバックラインで幅を作り出すパターンです。以下の図をご覧ください。

この場合はSHの選手が幅を作ることが多くなり、SBが低めのポジションをとることがほとんどです。これによって、相手を広げてアンカー経由で横断をしながら前進を行なっていきたいのがローマです。しかし2戦とも停滞してしまったのには、SBが早めに高い位置を取りすぎるのでマーカーを動かすことができていなかったからです。だから中央経由の前進が通れなくなってしまって、背後へのパスが多くなってしまいました。

また後に話しますが、これが352をユベントス戦で採用する理由になります。

そして最後にアンへリーニョとペッレグリーニが入れ替わるパターンです。詳細は以下の図をご覧ください。

このように外側と内側の入れ替えを行うことで、マーカーのズレを生じさせて門を広げる、閉じさせるの選択を迫っていくことで前進を図る方法です。これも昨季から行なっていることで、今季も継続して行なっていくと思われます。

ローマの前進のポイントをまとめると以下のようになります。

・マンチーニの攻撃参加の促し

・3バックと4バックの行き来

・SBの幅と高さ作りによるディバラの解放

・SBの立ち位置による中盤の引っ張り出し方

・DMFとIHとCHの行き来をする中盤

これらを行いながら、相手を動かした瞬間に背後を取っていく速攻と、ディバラを絡めながら押し込んでいくことで崩しを作っていく攻撃を使い分けながらローマはゴールに迫っていきます。

では両者の前進方法を抑えた上で、どのような攻防が行われそうか考えていきます。

僕の予想では、多くの時間でボールを握るのはユベントスだと考えています。先ほども述べたように、スペースの共有の仕方とそれによる周囲の時間の貯金の仕方がとても上手です。これに対してローマがどのように守備を行なっていくかはポイントになるでしょう。

そこでローマは4231に対して352で守備を行うことで、マーカーのズレを解消すると思われます。だからまず守備の局面を考慮した上で352を採用するのではないでしょうか。ではどのように守備の局面を作り出すのかを予想していきます。

こちらの図をご覧ください。

まずCBに対して制限を掛けれるように2トップを採用。さらに3CB化をするSBにはディバラを押し出すことを行いそうです。これを行う意図として、ディバラを前線に残すことで、ボールを奪った先の逃げ道を前方に用意できるからです。またWBを押し下げることによって、マーカーの明確性を保ちます。特にカンビアーゾが自由を得ることが多いので、ここに対してはSBのアンへリーニョ(もしかした担当は変わるかも)をつけていくと予想します。

デ・ロッシ監督はアウェイの地ですし、ユベントスにボールを握られる展開からプランを練ってくると考えます。まず1つ目に注目してほしい点として、ローマがどのような布陣で、どのような守備を押し出していくのかを見てみてほしいです。僕の予想はここに書いたようなものになります。

一方のユベントス。523や532のプレスはヴェローナ戦で履修済み。ユベントスの前進経路のところでも触れたように、CHが1stプレスラインの手前や外側に顔を覗かしていくことで、ローマ2トップの基準をずらしたり、IHを動かしてカンビアーゾやユルディスの出口を使っていくことができそうです。詳細は以下の図をご覧ください。


このようにユルディスやカンビアーゾがIH化すると、出口を簡単に作り出すことができて残るCHもレイオフを作成することも可能になるでしょう。ここに対してローマがCBを押し出してくるようだと、ヴラホヴィッチが背後に抜け出す攻撃を選択していくことができます。

ユベントスはこの前進のチャンスを作り出すためにやり直しを積極的に選択でき、ポジションを整えて攻撃を仕掛けていけるチームです。

では対するローマの攻撃です。ユベントスの守備ブロックは基本的に442になります。だからCBの攻撃参加や起点は簡単に作り出すことができるでしょう。こうなったときのCBの持ち出しは必須になるのですが、マンチーニもアンへリーニョもそれを行える選手なので、前進の部分は問題なさそうです。そこでポイントになるのがWBの立ち位置です。これが先にも触れた4321ではなく352で臨むと予想するもう一つの理由です。

352にすることによって、WBで優位性を保つことが可能になります。さらにバルダンツィは内側も取れながら相手と距離を作って相手を引っ張り出すことも可能です。そして引っ張り出した先でIHやCFが抜け出すスペースを作り出すことができます。ここのポイントの作り方がより上手いと証明したのが2節のエンポリ戦でのバルダンツィでした。ここの優位性をどのように取っていくのか、そしてどのようにユベントスがここの優位性を消していくのかは試合を大きく分けるポイントになりそうです。

最終局面の差は?

そしてもう一つ勝負を分けるのは最終局面の差にありそうです。ユベントスはヴラホヴィッチを中心にフィニッシュの精度と多彩さがあります。クロスからもハイプレスからのショートカウンターからも、ロングカウンターも崩しも。本当に多彩な攻撃とユルディスのアイデアを中心に最終局面を仕上げていきます。一方のローマ。彼らもまたディバラの創造性を中心に最終局面を作り出していきます。そこで決め切りたいのがドフビクです。昨季LaLiga得点王の彼にかかる期待は大きいですが、決定機逸脱が多いです。もちろん、そこに入り込めていることやセリエA初挑戦というのも考慮した上で、1ゴール早めにほしいところ。彼の能力を考えたときに、得点王争いに絡んでくるのは間違いなです。ヴラホヴィッチに届けるパスとドフビクに届けていくパスの比較はみていて楽しいかもしれません。そして何よりもディバラとユルディスのプレーに注目するだけでもきっとこの試合は早起きしてみる価値があると思います。

シーズン初めにいきなりのビッグゲームです。試合内容は対象的ですが、その流れが関係なくなるのがビッグゲームです。そしてこの一戦はシーズンを占う上で重要な一戦となることは間違いないです。早起きしてリアルタイムで見ることをオススメします!!!

Nobuya Akazawa|J1全部見るマン|

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