[総理大臣杯2回戦早稲田大(関東2部)2-1慶應義塾大(関東2部)、6日、宮城・セイホクパーク石巻フットボール場]

今季3度目となった宿命の一戦は早稲田大に軍配が上がった。試合開始早々の前半4分にカウンターから慶應義塾大FW香山達明(4年、埼玉・慶應義塾志木高)に頭で先制点を奪われるも、前半41分にDF西凜誓(りんせい、2年、名古屋グランパスU-18)が右足で同点弾を突き刺し、後半29分にはJ2横浜FC来季加入内定のFW駒沢直哉(4年、ツエーゲン金沢U-18)が技あり決勝ミドルでゴールネットを揺らしてチームを勝利へ導いた。

負傷離脱した主将の思いを背負って

この日先発したJ1川崎フロンターレ来季加入内定のDF神橋良汰(4年、川崎U-18)が前半にキャプテンマークを身に着け、後半から副将を務める駒沢が腕章を巻いて早慶戦に臨んだ。本来腕章を巻くべきだったMF伊勢航(こう)主将(4年、ガンバ大阪ユース)は7月末に右ひざ前十字じん帯を負傷して長期離脱を強いられている。主将の想いを背負って早稲田大イレブンは激闘の末に宿敵を打ち破った。

後半からキャプテンマークを巻いたFW駒沢

駒沢は「伊勢がああいう怪我をしてしまって、その中でも伊勢は常にチームに帯同して、キャプテンとしてやるべきことをやってくれています。だけどピッチにはどうしても立てない中で、ピッチでやれるのは自分たちなのでキャプテンマークはすごく重みがありました。あいつが後悔しないような試合をしないといけないと常に思っています」と献身的に働く主将の想いを背負って戦った。

その思いを結実するために駒沢は奮戦した。守れば相手枠内シュートをヘディングでクリアしてチームの窮地(きゅうち)を救った。前線から激しいプレッシャーをかけて慶應ゴールに襲い掛かった早稲田の背番号9は、後半29分に相手GKのビルドアップをカットして右足を振り抜き、ペナルティエリア外から美しい弧を描く決勝ミドルシュートをゴールマウスに叩き込んだ。

慶應イレブンと激しいマッチアップを見せたDF神橋(右)

前半に腕章を巻いた神橋もまた同期である主将の想いを背負って戦った一人だ。ゴール前では身体を張った守備で相手アタッカーに前を向かせず、粘り強く奮闘して最少失点に抑え込んだ。

「伊勢がシーズン開始当初から取り組んできた、示してくれている部分は間違いなく大きいです。伊勢がいなくなってピッチ内外で(影響が)大きいと思いますけど、そこを補って『伊勢がいなくてもやれるぞ』というところを自分からも示していきたいです。伊勢自身もピッチに立てない悔しさを押し殺してチームに向き合ってくれています。そういうサポートは助かっていますし、その姿を自分はしっかり見ています。伊勢のサポート、力を自分が受け取ってきょうキャプテンマークを巻きました。伊勢のコーチングは素晴らしいと思うので、そういうところを自分も盗むというか、最終ラインから(コーチングを)出すところを意識しました」と明かす。

試合開始早々に失点を喫して劣勢に追い込まれた早稲田イレブンだったが、神橋は気持ちを切らさずにディフェンスラインを鼓舞してラインを統率した。伊勢の長所でもあるコーチングを自分の武器にするように、神橋は最後まで声を張ってチームをけん引。二人のキャプテンが存在感を発揮したチームは、筑波大が待つ準々決勝へと駒を進めた。